米国では近年初めて50%以上の若者が両親との同居を選ぶ
ピュー・リサーチ・センターの統計によれば、7月の時点で、両親と同居している18歳から29歳までの米国人の数は2,660万人に上った。これは2月に較べて260万人の増加となっており、米国の若者の52%にあたる。これほどの大きな数字が出たのは米国の近代史において初めてのことである。大恐慌時代の1940年に実施された人口動態調査でも、両親と同居を望んでいる若者の数は48%であった。親との同居を選ぶ傾向は民族や性別を問わず、都市部でも農村部でも同様に見られるものである。親との同居の主な理由としては、23%が大学や学校が閉鎖されたこと、18%が職を失った、あるいは経済的な問題を挙げている。ちなみにコロナウイルスが終息すれば、実家を離れると答えた人もいるが、それも一部に過ぎない。ピュー・リサーチ・センターの報告書には、「若い人々の機動性は過去50年で最低のレベルにある」と指摘されている。
欧州では、南部と北部で差異
イタリアでは18歳から34歳までの64.3%が両親と同居している。イタリアではこうした若者をbamboccioni、つまり「大きな子ども」と呼ぶ。この数字は欧州の平均値(30.5%)を大きく上回っている。またクロアチア、ギリシャ、スロバキアなども同様に高い値を示している。一方で、北欧では、ほとんどの若者が一人暮らしを好んでいる。デンマークでは両親と同居している人の割合はわずか19.7%、英国では34.3%、ドイツでは34.5%となっている。さらに、欧州の統計を見ると、自分の家を持つことを望んでいない若者は35%に上る。こうした傾向が強いのはドイツ(45%)、イタリア(44%)、そして英国(41%)である。
ロシアと日本の状況
ロシアではほとんどの若者が親と離れて一人暮らしすることを夢見ている。しかし、統計的な数字としては欧州の平均よりは低いもの、ロシアでも世界的傾向は見られる。両親と同居している人の割合は、18歳から30歳で18%、31歳から45歳で10%、46歳から60歳で12%となっている。ロシアでは市内の大学に通う学生に対して、学生寮に住む権利は与えられないため、多くの若者は学業を終えてから実家を離れることが多い。一方、大学や専門学校がないような小さな町や村に住む若者たちは学校を卒業すると同時に親元を離れることになる。
興味深いのは、収入源に関する質問に、10代の若者を含め、多くの人が両親の収入と答えていることである。つまり両親の経済的な援助がなければ、独立した生活を送ることができないということである。
親と同居しながら、自分の収入を持たない、あるいは収入はすべて自分のためだけに使い、日用品や食費を親に頼って生活している若者のことをパラサイト・シングルという。これはもちろん極端な例ではあるが、こうした生活形態は、出生率に否定的な影響を及ぼしていることだけを考えても、日本の社会問題の一つであることは確かである。
学生寮とは異なり、いつでも食べ物がいっぱいの実家の冷蔵庫
ちなみに、多くの社会学者らが、この傾向を、人々の寿命が伸び、老年期の訪れが遅くなり、社会活動の時期が長くなったことと関連づけている。“若者”の範疇も、かつては28歳までと捉えるのが普通であったが、最近は35歳までと区分されるようになっている。