コロナウイルスのせい?
集団生物学に詳しい、ロシアのウラジーミル・ザハロフ生物学博士は人間の住む場所でクマの出没が増えているのは日本だけに限った現象ではなく、ロシア、米国などほかの国も同様であり、多くの点でコロナウイルスのパンデミックが引き金となっているとして、次のように語っている。
「人間の活動範囲は複雑な感染状況から目立って縮小しました。世界はあたかも『静まり返り』、野生動物にとっては脅かされる要素が減りました。ウイルスが人間を家の中に『追いやった』ため、動物はその分大胆になり、住み慣れた環境の外に頻繁に出るようになったのです。第2の原因は気候変動が徐々に進み、気温が上がっていることです。生態系はより豊富になり、生産性も上がりつつあります。これに連動してクマやその他の野生動物もすべての種類の体格が大きくなり、要される食の量も増してしまったのです。」
グリンピース、ロシア支部、調査鑑定プログラム課のイヴァン・ブロコフ課長は、他の野生動物と同様、クマは人間となるべく接触しないように努めているが、にもかかわらず、人間の前に姿を現しているのは、捕獲できる食物が減り、人里に出ざるを得ないからだとして、次のように説明している。
「人間はますます活動範囲を広げている一方で、クマの住み慣れた環境は反対にますます狭まり、人為的に制限されています。日本の研究者らはクマが人間の近くに出没するようになったのは、山間部で食糧が減ったからだと理由付けていますが、まさに高カロリーのドングリこそ、クマの主要な栄養源なのです。」
冬眠前にクマは脂肪を蓄えなくてはならない。ドングリが不作の場合、クマは食べ物を探して民家の周辺に出没することになる。
クマに遭遇! さてどうする?
ブロコフ課長はさらに、人家周辺に収穫された、またはなんらかの理由で放置された野菜や果物がある場合、クマの攻撃を誘発するとして、次のように語っている。
「私自身、コミ共和国、カムチャッカ半島でクマに遭遇した経験があります。それはもちろん驚きましたよ。でもクマの方は私に見向きもしませんでした。どうしてそうだったかといいますと、遭遇したのは2回とも夏だったんです。夏はクマが食する植物性の食べ物が豊富にあるのです。それでもこれが大型の雑食性の猛獣であることは忘れてはなりません。ほとんどの場合、植物性の餌で十分穏やかに暮らしていますが、これが不足してしまうと、状況によっては、たとえばクマが人間を自分の競争相手と認識してしまうと、攻撃を加えることもあります。一番いいのは遭遇してしまった時、慎重かつ悟られないようその場から立ち去ることです。煽るような真似は絶対にしてはなりません。」
専門家らは、安全のために森に一人で入らないよう進言している。この他、目立つ色の服装をする。こうした色をクマは怖がるためだ。また大きな音の出る呼子を携帯する。こういう音にもクマは驚く。ただし突然動いたり、逃げ出したりすれば、クマは攻撃性を増すので決してしてはならない。
日本で増すクマの攻撃 事態はどれほど深刻なのか
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