今回の電話会談はトルコ側の要請に応じて実施された。
トルコ大統領府は声明の中で、ナゴルノ・カラバフにおける紛争の停止は「トルコとロシアが地域レベルの紛争や危機の調停に向けて行う協力の重要性を示している」と強調した。さらに、シリア危機と同じく、ナゴルノ・カラバフ情勢でもロシアとの間に協力関係が構築されることにエルドアン大統領は期待すると声明には記されている。
また、会談でエルドアン大統領はナゴルノ・カラバフを追放されたアゼルバイジャン国民をもとの居住区に帰還させることの重要性を指摘した。加えて、アゼルバイジャンとその飛び地であるナヒチェヴァン自治共和国との間に回廊を用意させる必要性も指摘した。
トルコ大統領府の声明では、「停戦協定に記されている通り、アルメニアに停戦を順守させることが主要な問題となっており、この点においてロシアが重大な責任を負うとエルドアン大統領は考えている」と記されている。
また、ロシアの大統領府も声明を発表し、紛争停止に向けたロシアの取り組みをトルコ大統領府が高く評価していることを明らかにした。声明によると、ロシアによる取り組みの結果、「ナゴルノ・カラバフ紛争の長期的、そして包括的調停に向けた突破口を開くうえで重要な土台が築かれた」という。
カラバフをめぐるロシア・アルメニア・アゼルバイジャン合意の内容
アゼルバイジャンのアリエフ大統領、アルメニアのパシニャン首相、ロシアのプーチン大統領は共同声明に署名。声明ではモスクワ時間2020年11月10日00時00分よりナゴルノカラバフ紛争地域における完全な停戦が宣言されている。
アゼルバイジャンとアルメニアは現在の位置に留まっており、ナゴルノカラバフの連絡線沿い、またナゴルノカラバフとアルメニアを結ぶ回廊沿いにはロシア平和維持部隊が展開。国内の避難民・難民は国連難民高等弁務官の管理下に置かれたナゴルノカラバフ領および隣接地域に戻りつつある。捕虜やその他被拘束者、遺体の交換が行われている。同地域のすべての経済・輸送ラインは閉鎖されており、輸送管理にはロシア国境管理機関も一部協力している。
アルメニアのパシニャン首相は共同声明ついて、これは辛い決断だったが選択肢は他になかったと強調した。一方のアゼルバイジャンのアリエフ大統領は、合意文書の署名についてアルメニアの占領とコメントしている。
ナゴルノ・カラバフ紛争
紛争はナゴルノ・カラバフ自治州がアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国からの離脱を宣言した1988年2月に始まった。1992年から1994年の武力衝突でアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ及び隣接する7つの地域の支配権を失った。
アゼルバイジャンは領土保全を主張しているが、未承認国家ナゴルノ・カラバフは交渉当事者ではないためアルメニアがナゴルノ・カラバフの利益を擁護している。 19世紀から現在までナゴルノカラバフ住民の8割以上はアルメニア人。残り2割はアゼルバイジャン人、ロシア人、その他民族。