新型コロナウイルスの流行は、その感染拡大が始まる前も人口再生産のための人口の自然増加が不十分だった日本やその他の先進国に影響を及ぼした。
新型コロナの流行により、女性は病院に行くことや経済状況が悪化する可能性に不安を感じ、より良い時期まで妊娠を控えている。
日本の厚生労働省は、妊婦と胎児にしかるべき医療支援を提供するため、妊娠11週目までに妊娠届出書を自治体に提出することを勧奨している。厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の流行が妊娠活動等に及ぼす影響を把握するため、妊娠届出数の状況を取りまとめたが、そのデータは懸念を呼んでいる。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令されていた5月の全国の自治体への「妊娠届」の件数は6万7919件で、前年同月比17.1%減に落ち込んだ。6月同5.4%減の6万7115件、7月同10.9%減の6万9448件と前年を大きく下回っており、1~7月の累計も前年同期比5.1%減の51万3850件となっている。
過去の経験は、流行発生後に「妊娠の一時停止」が訪れることを示している。過去に流行が起こった際には、出生数が月平均の15~25%減少した。現在の状況も一時的なものであることが望まれる。
世界の人口が最も減少したのはいつ?
14世紀半ばに起きたペストの流行では、欧州の人口のおよそ60%が死亡した。この流行は人口動態に壊滅的な影響を及ぼしただけでなく、経済や文化にも影響を与えた。
長い航海に対する欧州の人々の恐れは消えた。彼らは、陸で死ぬのも海で死ぬのと同じくらい容易いことを理解した。また植民地化は、米国先住民の人口減少を引き起こした。原住民は侵略者によって殺されたほか、彼らが持ち込んだ病気によっても命を落とした。飢饉と戦争は中世の人口増加を妨げ、1727年までにその人口はすでに6億人となった。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて出生率は低下したが、スペインかぜの大流行と第1次世界大戦にもかかわらず、死亡率は低下を続けた。
第2次世界大戦後は、福祉の向上とともに1950年代から1960年代に、特に米国でベビーブームが始まった。
中流階級は成長、発展し、安価な住宅ローンが登場し、カップルは早く結婚し、できるだけたくさんの子どもを持とうとした。欧州、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどでも同じような状況となった。
日本では終戦後の1947年から1949年に第1次ベビーブームが起こり、年間およそ250万人が誕生した。当時、1人の女性の平均出産数は3人だった。その後、出生数は徐々に減少した。1971年から1974年までの第2次ベビーブーム期の年間出生数は、第1次ベビーブームより少し少ない約200万人だった。それ以降、出生率は減少を続けている。2005年の出生率は1.4だったが、人口再生産に必要な出生率は2.1。
人口再生産に必要な出生率はなぜ2.1なのか?
これは、人口を維持するには女性1人が2人出産する必要があることを示している。夫婦が子ども2人を生んだ場合、人口は変わらない。一方、生活水準や保健・医療水準が高くても、一部の赤ちゃんは大人になる前に死亡してしまう。
そのため、先進国で人口規模を維持するために必要とされる出生率は2.1とされている。乳児死亡率が高い国では、この指標がより高くなければならない。
原因は女性ではない?
低い出生率が標準として認識され始めると、社会のこの傾向を変えることはほとんど不可能だ。現代の女性にとって子どもを持つことは年長者や社会に対する義務ではなくなったが、社会は女性が出産しないとして非難し続けている。しかし果たして、これは本当に女性だけの問題なのだろうか?
世論調査がこれを証明している。JWTグローバルが日露中米英印など9カ国で実施したオンライン調査「Women Index調査」によると、30代及びフルタイム就業者で「将来子供を作る予定がある」という回答が低下していることがわかった(30代:27%→24%、フルタイム就業者:25%→12%)。
18歳から49歳の子どもがいない日本女性で、将来的に子どもを作る予定があると回答したのは、2016年が24%だったのに対し、2018年は13%だった。
その理由は仕事だと思うかもしれないが、そうではない。日本人女性が子どもを作らない(作るかどうかわからない)主な理由は、「子どもを作ろうと思えるパートナーがいない」 や 「パートナーのサポートが得られない」からだという。
つまり、子どもを持つだけでなく、定期的に家事や育児をする用意のある男性を増やす必要があるということだ。そうでなければ、日本の出生率低下の問題は解決されないだろう。