トランプ政権時代、米国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱。これで事実上、この地域で隣国への影響を強める中国と肩を並べるチャンスを自ら断ち切った。このため、次期大統領のジョー・バイデン氏にはトランプ氏の保護貿易主義の否定的影響を克服するという容易ではない長期戦が待ち受けている。
2020年、菅首相は、ひょっとするとある程度はおそらくトランプ氏のおかげで幻想を抱かずに済み、米国から離れて自国の経済問題を解決するという免疫が付いた。なぜなら日本は新貿易合意(事実上はTPPの類似版、ただし中国が参加)から利益を得るのは間違いないが、米国企業は当初から都合の悪い立場に立たされてしまうからだ。
ロシアの雑誌「エクスペルト」金融アナリストのアンナ・コロレヴァ氏は、この状況が生まれた原因はまさに米国にあると考えている。
「アナリストらの大半は中国経済が米国に『追いつき、追い越す』のはもう時間の問題と見ています。新たな貿易合意の効力範囲に入らなかった米国企業らは、自社製品を輸出するために以前と変わらず関税を払い、大量の合意書を通過させねばならない。特にトランプ政権の米国自身が始めた、この『ハードルの高い』保護主義の条件下では大変です。このファクターは当然ながらアジア市場での米国企業の活動を複雑化させています。企業の中には米中関係の悪化を背景にアジア市場から『追い出される』者も出てくるでしょう。」
こうした一方で中国は着々と地域でのソフトな地政学的政策を実現化させている。これは新合意によって日本も非常に時期よくこの自由貿易圏に組み込まれた。コロレヴァ氏は、中国も合意締結に一番都合のいい時期を選んだとして、次のように語っている。
「アジア諸国間でのこの合意締結には、今、米国は注意を向けていません。民主党と同党推薦のジョー・バイデン氏が政権に収まり、必要な人選を終えるまでには少なくともあと数か月はかかります。こうした一方でアジア地域の自由貿易圏は障害にぶつかることなく、次第に実現化していきます。米国が大統領選挙の後になかなか我に返ることができない間に、合意参加国らは優先的に大きな割合を受け取り始めます。米国は事実上、この地域での中国の地政学的なソフトパワーに対抗する機を逸しているのです。」
コロレヴァ氏は、TPPフォーマットへの米国の回帰はこの状況の中では待つに値しないとして、さらに次のように語っている。
これがまさに日本をも魅力となっている。日本のGDPは現時点でパンデミック後、記録的な速度で回復を見せている。第3四半期の年成長率は21.4%で、予測の18%を大幅に上回った。このことは、アジア諸国間の自由貿易圏の新合意が良好で「しかるべき準備のなされた」土壌の上に立脚していることを指す。これは、今年、日本経済がはまり込んだ「景気後退の穴」からのいち早い脱却を促してくれるだろう。