安心、安全が最優先事項
菅首相は、日本側はIOCと緊密な協力を継続しており、大会を無事に開催するためにできる限りのことをすると強調した。首相は、日本とIOCは選手と観客の安心と安全を確保するためのさまざまな案を検討しているとし、政府は外国からの観客に対し、原則として14日間の待機を免除し、コロナウイルス感染が陰性であることを示す証明書があれば公共交通機関の利用を認めることを検討していると明らかにした。一方、バッハ会長は、状況によっては観客数を減らす可能性があるとの考えを明らかにした。バッハ会長は、安全が優先事項であることから、観客は妥当な数に制限することになるだろうと述べ、オリンピック開催までにワクチンの接種が可能となっていた場合、選手に対するワクチン接種についてはIOCがその費用を負担すると明言した。バッハ氏はまたすべての選手がワクチン接種を受けられるよう最大限努力するとの考えを明らかにし、五輪開催までの8ヶ月の間に、ワクチンの開発はさらに進んでいるだろうとの確信を示した。
観客数はまだ未定
東京五輪の延期が決まったのは3月24日。このころはパンデミックという言葉も出ていなかった。欧州や米国でも非常事態宣言は出ておらず、日本でも感染が広がり始めたばかりであった。クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」内で700人を超える集団感染が確認されたというニュースは世界的なセンセーションとなった。この時期、中国ではすでに感染者数は8万人を超えていた。しかし、現在その状況は大きく変化した。世界のコロナウイルスの感染者は5,500万人以上となったが、現在、米国の感染者が400万人を超えている一方で、中国の感染者数はわずか353人に留まっている。以前、日本政府は外国からの観客を受け入れるかどうかを決めるのは来年の春以降になるとしていた。もちろん日本は、外国からの観客を受け入れることにより、一定の経済効果を得ることができる。しかし、世界の一連の国々でコロナウイルスの感染者数はまだ減少傾向にないことから、観客数をどのくらいにするのかについてはまだ疑問が残ったままとなっている。
一方、8月末から10月初旬にかけて、インターネットリサーチ会社NEXERが実施した世論調査によれば、回答者の35.3%が大会の中止に賛成、22.8%が無観客での開催に賛成すると答えたものの、もっとも多い41. 9%が、観客を入れた完全な形での開催を希望すると答えている。
「希望は地上の羅針盤」
ロシア近代五種連盟の会長で、国際近代五種連合の副会長を務めるヴャチェスラフ・アミノフ氏は、「スプートニク」からのインタビューに応じた中で、「観客を入れないオリンピック大会は組織側にとっても、選手にとっても物足りないものになるでしょう。これは世界でもっとも主要なスポーツイベントなのです」と語っている。
体操の国際親善大会で選手たちが見せた友情のサイン
東京では、11月8日から11日にかけて、体操の国際親善大会が開かれ、日本、ロシア、中国、米国の4カ国から30人の選手が参加した。「友情と絆の大会」と名付けられたこの大会は、世界にコロナウイルスが蔓延してから初の国際大会となったことから、オリンピック開催を前にした「試金石」として注目された。大会は、これまでにないほどの予防策が講じられた上で開催されたが、日本の主力選手である内村航平選手が検査で偽陽性となったことから、一時は中止になるかと思われた。もっとも、再検査で陰性となった内村選手は大会にも参加した。大会に参加した世界チャンピオンのアルトゥール・ダラロヤン選手がロシアの記者らに語ったところによれば、空港では選手全員に、各選手の位置情報を確認するための携帯電話とマスクが配られたという。代表チームの選手らはホテルで各階に分かれて滞在し、朝食と検査には全員で移動したが、食事はそれぞれのチームごとに別の部屋でとった。またホテルから外に出るには、たとえ決められた階の中でも許可証を取得しなければならなかった。また競技が行われたアリーナでも、厳しい配置が決められ、観客は前後左右に1席ずつ間隔を開けて座席指定された。大会の運営スタッフらも握手や抱擁は禁止されたが、出場した選手たちは肘や拳を合わせるという友情のサインで互いを称え合った。