「核抑止政策」  米豪が極超音速兵器の共同開発合意を締結 その裏に何が?

オーストラリアは米国と共同で、極超音速巡航ミサイルのプロトタイプの開発と実験を行う。これについてリンダ・レイノルズ豪国防相は、この合意は「オーストラリアに対する攻撃」の抑止に役立つものだとの見解を示している。
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なぜオーストラリアに極超音速ミサイルが必要なのか?

豪国防相の発表によれば、先週、豪州と米国は、極超音速巡航ミサイルのプロトタイプの開発と実験における協力に関する新たな合意を締結した。この合意は「サザンクロス統合飛行研究実験」の一環として結ばれたもので、「極超音速巡航ミサイルの実物大のプロトタイプの合同の飛行実験に実施を見込んでいる。」

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レイノルズ豪国防相は声明の中で、オーストラリアは国の防衛能力の強化に向けた軍備への投資を拡大していく意向を明らかにした。また、声明によれば、豪政府は、攻撃抑止のミサイル防衛の可能性をより広げるため、2020年の軍備増強計画の枠内で、93億ドル(約9,738億円超)を拠出し、極超音速兵器の開発、実験、有効性の分析を行うなして、長距離の速攻能力を高め、ミサイル防衛の強化を準備していく。

また豪国防相は声明の締めくくりに、オーストラリアへの攻撃抑止ポテンシャルに投資することは、インド太平洋地域全体、そしてオーストラリアのすべての同盟国、パートナー諸国にも有益なものになると強調し、オーストラリアは今後も「地域の平和と安定」を支持すると表明した。

米国が極超音速ミサイルを必要とする理由

インド太平洋地域の極超音速兵器に関しては米国防総省には独自の計画がある。マイケル・クラシオス国防副長官代行・調査研究担当は単刀直入にこう語る。

「このイニシアチブ(編集:極超音速巡航ミサイルのプロトタイプ)は将来の極超音速兵器の調査、開発のための第1ステップ的な意味を持つ。 これで米国およびその同盟国は質的に新たなレベルでの軍事ポテンシャルの開発で首位を守ることができるだろう。」

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米「ディフェンスニュース」誌によれば、新型の高精度極超音速ミサイルの実験はこの先5年から10年の間に豪州で実施される。

米豪が「抑止」しようとする相手は誰?

レイノルズ豪国防相の公式的声明でどの国からの攻撃に備えるのかは、明言されていない。ところがロイター通信をはじめとする西側のマスコミは、レイノルズ豪国防は極超音速ミサイルの共同開発が「ロシア、中国への対抗を目的」としたものであることを示したとみている。

ロシア人専門家らは、米豪が極超音速兵器の開発、実験合意を結んだのは、かなりの部分「中国抑止政策」の中での話と見ている。

ロシア科学アカデミー安全保障問題調査センターの専門家、コンスタンチン・ブローヒン氏は、ロシアだけが極超音速ミサイルを保有している事実が米国をいら立たせているのは間違いないものの、豪州がより憂慮しているのはアジア太平洋地域で群を抜いて伸長する大国、中国のほうだと指摘している。豪州はここ数年、この中国と政治でも経済でも問題に突き当たっている。このため豪州は、中国を抑止するためであれば分野を問わず米国と「仲良く」する構えなのだ。

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