というのも、ノルウェーが、フィギュアスケートのシニア選手の年齢制限の引き上げを提案したのである。現在、国際スケート連盟(ISU)が開催する大会の年齢制限は、シーズン前の7月1日時点で15歳であることと定められている。カミラ・ワリエワは五輪開催時にはこの年齢に達しているが、ノルウェーはこの制限を17歳に引き上げるべきだとしている。
ソチ五輪で金メダルを獲得したマクシム・トランコフ氏は、「ノルウェーは、現在、スキーやバイアスロンでは絶対的上位に位置していますが、フィギュアスケートではこの数年、入賞選手を1人も出していません。現在、フィギュアで上位を占めているのは、ロシア、日本、米国、カナダ、中国などで、フィギュアの年齢制限の引き上げについては、こうした国々の意見が決定に反映されるべきだと思います」と述べている。
年齢制限引き上げに賛成する人々は、選手としての活動をより長く続けさせることをその理由に挙げている。最近は、より難易度の高い演技要素を簡単に習得することができる15〜16歳の選手には太刀打ちできないというのを理由に、多くの選手が早い時期に選手人生を終えてしまうという状況になっている。
「おそらくシニア大会への関心というものはなくなっていくでしょう。なぜなら、今、女子シングルを牽引している若い選手たちの素晴らしいウルトラCレベルの技が見られなくなるからです。ファンの多くは、自分の好きな選手を応援し、そして難易度の高い技をみるために大会に足を運んでいるのです。加えて、ジュニアの期待の選手がシニアの大会に出られなくなれば、その選手は脚光を浴びる時期を逸してしまいます。選手をジュニア代表に長期間、留め置けば、選手として長く活躍するためのモチベーションを下げることになってしまいます。ジュニア選手はシニアの大会に参加することで、少しずつ精神的にシニアに適応していくのです。いまの15〜16歳の女子選手たちのスケーティングは驚異的です。それは技術やウルトラC級のジャンプだけではありません。スケーティング、ポジション、スピン、演技構成。すべてが素晴らしいレベルにあります。かつてこれほどのレベルに達することができたのは20歳くらいの選手でした。なぜ、この未来への進化の可能性を取り上げようとするのでしょうか」。
仮にISUがノルウェーの提案を承認した場合、この規定は北京五輪から反映されることになり、ワリエワはシニアとしてのキャリアを2年失い、再びジュニアに戻ることになる。