シベリア鉄道活用で欧州への小口貨物輸送がより便利に:東洋トランス、年明けから新サービス開始

ロシア・CIS向け輸送に力を入れている東洋トランスは、来年1月半ばから、シベリア鉄道を活用した欧州向けLCL(混載)サービスを開始する。これにより、小口貨物をより早く、安定的にヨーロッパ各国へ輸送できるようになる。同社の高橋勲社長は「コンテナ単位では既に貨物の取扱いを進めているが、コロナ禍の影響で国際航空便が運休する中で、小口の貨物をより早く欧州に運ぶサービスが求められている」と話している。
この記事をSputnikで読む

新サービスは、海上輸送、鉄道輸送、トラック輸送の3種類を組み合わせたものだ。まずは富山からロシア極東のウラジオストク港へ海上輸送し、ウラジオストク駅からモスクワ近郊の編成駅まで、シベリア鉄道で運ぶ。そこから欧州向け列車に接続し、ベラルーシとポーランドの国境であるブレスト駅まで輸送する。軌道幅の違いがあるため、ブレストでコンテナを載せ替え、ポーランドのクトノ駅に輸送する。クトノ駅からはトラックで、ポーランド西部のポズナンまで運ぶ。欧州の主要都市へは、ポズナンから更にトラック輸送ができる。

日本事務所開設、シベリア鉄道復興の助けになる? ロシア鉄道第一副社長インタビュー
新サービスを使った、富山からポズナンまでの輸送にかかる時間は22日間で、全て海上で輸送する場合に比べ約半分短い。費用面でも、航空便を使った場合に比べて約半分に抑えられる。このルートはスピードとコストのバランスが良く、海上輸送、航空輸送に次ぐ、第3の選択肢としてのシベリア鉄道のメリットを生かしたものだ。また、航空機では運ぶことのできないリチウム電池などの危険品を短時間で運べるという利点もある。

東洋トランスはこれまでも、シベリア鉄道を使った輸送サービスを段階的に拡充させてきた。2019年6月、ロシアへ小口の貨物を運ぶのに便利な混載サービス「モスクワ・エクスプレス」をスタート。その後は極東輸送のニーズに対応するためウラジオストクを仕向け地として追加したり、積み出し港も従来の横浜以外に富山を追加するなど、利便性を高めてきた。

シベリア鉄道を使った輸送サービス拡充、新型コロナで日露間の物流にも変化
今回の欧州向け新サービスは、従来のサービスを延伸させた発展形となる。このタイミングで新サービスを開始する理由について東洋トランスは、これまでの経験から「シベリア鉄道を使った欧州向けルートの確実性が確認できた」ためだとしている。また、欧州の物流会社と契約して現地代理店とし、貨物の着地点でカスタマーサービスを行うことで、顧客にとっての安心感も高まる。

ソ連時代、シベリア鉄道は、日本から欧州への輸送手段として一般的だったが、ソ連崩壊とともに利用が激減した。魅力は安さだけで、到着日が不透明だったり、貨物の保存状態が悪かったり、船から鉄道に積み替えるのに手続きが煩雑だったりと、様々な問題があったためだ。

しかしここ数年、このルートを再構築し、生まれ変わったシベリア鉄道の利用を促進しようという動きが広まり、日露両政府もこれを後押ししている。国土交通省は、2018年度、2019年度と連続して「シベリア鉄道による貨物輸送パイロット事業」を実施。これまでの実証事業では主にコンテナ1本での貨物輸送を行ってきたが、今年11月には初めて、ブロックトレイン(1編成借上げ列車)による、日本―欧州間のパイロット輸送を実施した。実証事業の結果は、今年度中に取りまとめられる予定だ。

コメント