9月半ばに菅氏が首相に就任した直後、首相は不愛想な役人のイメージを払拭しようと、あるインタビューで自身のことを、呼称を使い、冗談めかして「ガースーです」と自己紹介した。しかしこれは、国民からの好感を得ることはできなかったばかりか、ネット上で非難の声が相次いだ。
「国民へのメッセージ」と聞かれた菅総理大臣は、コロナのため亡くなった国民の遺族や仕事を失った国民への暖かい言葉ではなく、「皆さんこんにちは、ガースーです、どうぞ宜しくお願い申し上げます」と笑いながら言った。「それだけ?」と聞かれても「大丈夫です」。あるツイッターユーザーはこのように書いている。
10月、菅首相は日本学術会議の会員候補のうち、6人の任命を拒否し、このことが大きな騒動を引き起こした。この6人は、安全保障関連法を始めとする菅政権の政策を批判していたメンバーであった。6人の任命拒否は、「学問の自由」の侵害であり、学術会議の独立性を破壊するものだとして首相は非難を浴びた。これに対し、菅首相は、学術会議の改革が必要だとした上で、会員が一部の大学に偏っていると指摘、民間や若手、地方からも選任される多様性の確保が必要だとの認識を示したが、こうした反論は野党側から批判を受けた。さらに菅首相が、首相の発案に異議を唱えた官僚を要職から外したことにも非難の声が向けられている。
これに関連し、ロシア極東研究所のワレリー・キスタノフ日本研究センター長は、「スプートニク」からのインタビューに応じた中で、日本では独裁者としてのネガティブなイメージが強いスターリンとの比較は、当然ながら菅首相にはプラスにならないと指摘する。
「もちろん、菅首相は権威主義的という意味ではスターリンにはほど遠いですが、独善的な首相のやり方は当然、不満を呼ぶものです。日本では、あらゆる問題を協議にかけた上で、そこから妥協点を見出すというのが伝統的なやり方だからです。一方、新型コロナウイルス感染拡大対策に関する菅首相の対応にも不満が噴出しています。とりわけ、「GoToトラベル」キャンペーンの停止をなかなか決断できなかったことなどです。この事業により、国内旅行をする人が増え、それにより感染が拡大し、結果として東京を始めとする複数の都市で緊急事態宣言を発令することになったのです。現在、日本のコロナの感染状況はかなり厳しく、このことが社会の緊張と政府への不満に繋がっているのだと思います。1月9日から10日に共同通信が実施した世論調査の結果によれば、日本人は、外国人観光客がコロナウイルスを日本に持ち込むことを恐れており、80%の回答者が東京オリンピックの中止または延期を支持していることが分かっています。また、9月には60%だった菅首相の支持率が40%にまで急落したのは、 首相の政策への不満、世論や権威ある学者たちの意見に耳を傾けようとしないことによるものです。これにより首相の評判は下がったわけですが、おそらく首相自身、これに気づいているはずです」。
ソーシャルネットワークやメディアで、「スガーリン」という呼び名が広まったのは、菅氏が新たな首相に選ばれた秋の初めごろからだが、赤を背景に「国民のために働く」というコピーが書かれた菅首相の姿を映した自民党のポスターもこのイメージづくりを後押しすることとなった。このポスターは、赤いソ連国旗をバックしたスターリンのポスターによく似ているのである。