NATO加盟国とロシアの共同訓練は関係修復の試みか?

ロシア 、日本、中国など40カ国以上が参加する多国間海上共同訓練「AMAN2021」が、パキスタン沖でスタートした。ロシア海軍の艦船が北大西洋条約機構(NATO)加盟国と共同で訓練を行うのは実に10年ぶりのことである。
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長引く米露関係の悪化を背景に、共同訓練再開のニュースは意外なものに思われる。「スプートニク」は、この予期せぬ米国の「外交作戦」の理由と目的について、軍事専門家のアレクサンドル・ミハイロフ氏にお話を伺った。ロシアとNATO加盟国が参加する共同訓練の再開は、両者の間の政治的対立の様相を変えることになるのだろうか?

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演習の公式的な目的は、全世界の共通の敵であるテロとの戦いだと専門家は指摘する。この目的は、ロシア(NATOに加盟していない)をも含めたすべての参加国に、西欧諸国との接点を見出すことを可能にするものである。「NATO加盟国との共同訓練の実施は、ポジティブなニュースです。演習の実施国についても正しい選択と言えるでしょうパキスタンは南アジアにおけるテロの脅威の発生源となることが多いアフガニスタンと国境を接しています。またここは、重要な海上輸送路が通過するインド洋上に位置しています。つまり21世紀において、この海域の重要性は増すばかりです。さらに訓練はアジア太平洋地域で実施されますが、ここは、近く、中距離・短距離ミサイルのインフラが設置されることになっている場所です。ロシアはこうした条件の中で、自身の軍事力を見せつける機会を得たのです。ですから、アジア太平洋諸国との連携行動を訓練することは、パキスタンでの演習に参加したすべての国にとって有益な経験となるでしょう」。

訓練の開始を前に、米国がロシアとの間で結ばれている新戦略兵器削減条約(新START)の延長を決めたことが明らかになった。

専門家のアレクサンドル・ミハイロフ氏は、これもバイデン大統領が、米露間の対話を実用的で、互恵的なものするという期待を感じさせる前向きなニュースだと指摘する。

「バイデン大統領は新STARTのような重要な条約を延長したことで、予想外にも、自身の交渉能力を顕示することになりました。(少なくとも、就任直後の現在は)新政権に反ロシア的な前提条件はないとアピールすることとなったのです。今後、バイデン大統領が積極的な反ロシア路線を継続する可能性はあります。しかし、バイデン新大統領の実用的な決定は、なぜか露米関係改善に期待を抱かせます。何れにしても、2021年2月5日に有効期限が切れる新START条約のような重要な問題をめぐっては期待が持てます。米国とロシアの間には、この条約に関して、大きな意見の対立がありました。この条約が延長されたことにより、世界は地球の安全保障と軍拡競争の抑止のために非常に意味のある5年の猶予を手にすることになったのです。そしてパキスタン沖でのロシアとNATOの共同訓練は、正しい方向に向かってさらに1歩踏み出すものです」。

新STARTは現時点で、露米の間で締結された唯一の核兵器制限条約である。アレクサンドル・ミハイロフ氏は、加えて、ロシアと米国は新STARTの延長に留まらず、双方を壊滅させる恐れのある核兵器の削減をさらに積極的に進めていくべきだと指摘している。

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