黒でない髪はすべて「正しくない色」なのか 地毛で生活する権利を求めた元女子高生の訴えが棄却

茶髪を黒く染めるよう繰り返し指導され、精神的苦痛を受けたとして、大阪府立高校の元女子生徒(21)が大阪府を相手取り、慰謝料などを求めた訴訟で、大阪地方裁判所は、校則にしたがい、茶色の髪を黒く染めるよう指導することは合法的なものであるとの判断を下した。4年にわたって続いた元女子生徒と大阪府との争いは、33万円という賠償命令で終止符を打った。「スプートニク」は茶髪の人々が日本でどのような問題に直面しているのか、またなぜ社会は黒髪でない人に批判的なのか、調査した。
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出る杭は打たれる

4年にわたった裁判手続きは、元女子生徒の勝利に終わった。しかし、それは彼女が求めていた勝利ではない。2017年に元女子生徒が起こした訴訟では、裁判所は、大阪府に対し、元女子生徒が黒染め強要によって不登校になった後、学級名簿に名前を載せなかった学校の行為などを違法として、33万円の賠償を命じた。

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しかし、そもそもこの訴訟の争点はここではなかった。元女子生徒は、大阪府立懐風館高校(羽曳野市)に在籍中、1年半にわたって茶髪を黒く染めるよう繰り返し指導され、精神的苦痛を受けたとして、それに対する慰謝料など約220万円を求めていたのである。元女子生徒とその母親によれば、生来の髪の色は茶色だが、学校側は全員一律に黒髪であるよう校則で要求していた。

小学校時代は、髪を黒く染めなければならなかったが、生徒はそれによって、「頭皮や頭髪に健康被害が生じた。身体的特徴を否定され、精神的苦痛も受けた」としている。中学校時代は、地毛のままで通学していたが、教員たちは黒染めを強要し、圧力をかけ続け、中には、たとえば、「黒染めしないなら学校に来る必要がない」などといった不適切な発言をする教員もいたという。

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元女子生徒によれば、このことで大きなショックを受け、これをきっかけに不登校になった。しかし、これを受けて学校側は反省するどころか、学級名簿から彼女の名前を削除した。

しかし、大阪地裁は元女子生徒が受けた精神的苦痛については注意を向けず、彼女の茶髪が生来の髪の色かどうかについては疑問であるとした。

横田裁判長は「校則は社会通念に照らして合理的な内容で、頭髪指導は学校教育法上の正当な目的に基づく」と述べ、いずれも違法性を認めなかった。

女性の代理人弁護士は記者会見し「残念で責任を感じている。地毛が黒色とは不当な事実認定だ」と話した。府教育庁は「校則や指導の在り方について主張が認められた。(氏名不記載は)今後このようなことがないよう取り組む」とのコメントを出した。

学校の規則と常識

もともと、校則というものは、学習への集中力を妨げないことを目的としたものであり、日本の学校では髪の染色は禁じられている。日本の学校に通う生徒の大部分を占める日本人のほとんどは生来、黒髪であるが、しかし中には茶色がかった色の髪の生徒もいる。しかし、現在の校則では、茶髪の生徒たちは、目立たないようにするため、地毛を黒染めしなければならない。

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これは生来の髪の色が黒ではない外国人の生徒も同様で、「生来的に金髪の外国人留学生でも、規則では黒染めをさせることになる」というのが実態である。

これについて、インターネット上では、多くのユーザーたちが、矛盾していると指摘している。つまり、染色を禁じる校則のために、髪を染めることを求められているからである。

「校則は”黒髪”にしなければいけないの?もしそうならなぜ? 校則自体が生まれ持った髪を染めるのがいけないのであれば黒に染めるのも校則に反する。」

​「地毛証明書」

日本の中学校、高校は校則が厳しいことで知られており、ときには限界に達する場合もある。頭髪の色については、校則を遵守しながら、生来の色の髪で登校する権利を得るための「地毛証明書」という特別な書類まである。この「地毛証明書」は、生徒の髪の色が生来のものであり、染色もパーマもしていないことを証明するものである。しかし、この書類は東京でしか発行されておらず、それ以外の府や県では、最終的な判断は学校に委ねられている。大阪ではいくつかの中学校で「地毛証明書」が導入されている。これは、髪の長さを測り、髪の色に関する情報を記入し、髪が伸びても髪の色が変わらないことを証明するというものである。

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一方、多くの有名人たちは、髪を黒く染めるという学校側の要求は、馬鹿げたものだと指摘している。教育評論家の尾木直樹さんは「身体について証明書を出させるなんて明らかな人権侵害だ」と憤る。「大人は、子どもをケアしつつ人格を尊重するという、対等の関係を目指すべきだ。これは上からの一方的な押しつけだ」。

ツイッターでは、アイドルの秋元才加さんも、髪の色がみんなと違うことから受けた否定的な経験について次のように呟いている。「私も高校の時、髪染めてないのに染めてるとひたすら言われて悔しくて、これでもかって位黒くしてやろうと黒染めしたら、父親が“なんだその髪色は!おかしいだろ!”って言って、“私の娘はもとから赤毛だ!”って高校に来たことあった。規則は大事だけど、大事な事もっとあるはず、ってその時思ったな。」

​学校と生徒の間で生じた争いごとにおいて、裁判所が学校側に有利な判決を下すのはこれが初めてではない。2020年には、京都の中学校の元女子生徒が長年におよぶいじめを受けたとして、学校と元クラスメイトに対して起こした訴訟では、元女子生徒が求めた金額の数分の1の支払いを命じるにとどまり、訴えはほぼ完全に棄却された。

また学校における不寛容については、マスコミでも一度ならず取り上げられている。2020年、スポーツ関連企業のナイキは、褐色の肌や明るい色の髪、天然パーマなどの人と違う外見の生徒たちの差別にスポットを当てた社会的なCMを発表した。

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