ストレリツォフ氏は、菅政権はロシアに対する政治的な立場を大幅に変更したと指摘し、その理由は2つあるとしている。
「日本には安倍前首相の対ロシア政策の結果に対して、やや失望した感があります。それに加え、菅首相は、安倍前首相と異なり、ロシアに対する個人的な関心もありません。菅政権はロシアに対する戦略を選択する必要に迫られています。その戦略の土台となるのは、領土問題をすぐに解決しようとしないこと、そしてロシアが一方的に中国に依存することを防ぎ、ロシアが政治的な決定を下す際に一定の幅を持たせることを目的とした経済プロジェクトを進めることです。
一方、伏田寛範氏は、安倍前政権の対露政策は正しく、その路線を継続していく必要があると述べている。
「安倍前首相の経済協力プランは経済のほぼすべての分野を網羅するものでした。その中には、良好な成果を生んだものもあれば、またそれほどでないものもありましたが、全体として安倍前首相の対露政策は正しかったと思いますし、それを継続していかなければなりません。しかし、依然として、日露の経済関係は、資源―石油やガスの採掘が中心であり続けています。わたしが思うに、現在、もっとも大きな展望が開けているのは水素エネルギー分野でしょう。極東ではすでに水素エネルギー発展プロジェクトが実現され始めていますが、これは近い将来、両国の協力においてもっとも展望のある分野だと思います」。
では、米国による制裁が露日の経済関係に否定的な影響を与える可能性はあるのか?この問いに対し、ストレリツォフ氏は、それが国益に適うものであれば、日本は制裁を回避することができるだろうと指摘している。
では、制裁以外に、露日の互恵的な経済関係発展を妨げるものはあるのだろうか?日本人はロシアに対して好感を持っていないが、協力の重要性については認識していると伏田氏は言う。
「答えは、日本政府が2021年2月に実施した世論調査の結果に現れています。日本人の多くはロシアに好感を持っていません。同時に、日本人はロシアはアジア太平洋地域において非常に重要な国であり、経済分野、政治分野におけるロシアとの協力は日本にとって必要なものだと理解している、という矛盾があるのです。この問題を解決するには、民間レベルの人的関係を拡大する必要があります。それにより、ロシアに対する日本人のイメージが改善されます。これは経済協力にとっても重要なことなのです」。