「誰も責任は取れない」 福島原子力発電所の汚染水の海洋放出について、専門家と活動家の意見

日本政府は、漁業団体が反対を表明し、隣国が懸念を表しているにもかかわらず、福島原子力発電所のタンクに保管されている処理済みの汚染水を海洋放出するとの決定を下した。汚染水には除去することが不可能で、しかし大量に摂取されなければ人体に被害はないとされるトリチウムが残っている。「スプートニク」は、日本政府のこうした決定は危険なものなのか、あるいは十分信頼に足るものなのか、専門家に話を聞いた。
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ロシア国防省研究センターの主任専門家で、化学博士でもあるイーゴリ・ルィバルチェンコ教授は、次のように述べている。「トリチウムの濃度は海中で間違いなく低下します。しかし、摂取量が少量であっても、トリチウムは生物の体内に蓄積される特性を持っています。トリチウムは水中でも分解されることはありません。つまり、魚、貝などの水中の生物に取り込まれてしまうことになり、食べ物となって人間の食卓に上るのです。トリチウムを取り込んだ食品が健康を改善させるものでないことは明らかです」。

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その上でルィバルチェンコ氏は、日本にとって、汚染水の放出は必要に迫られた選択であり、他に方法はないと述べている。そして、これが慣例として繰り返されるのではなく、一度限りの処分法であれば、環境や人体への大きな被害は避けることができると指摘する。

一方、ロシア科学アカデミー会員で化学博士のユーリー・ゾロトフ氏は、日本の専門家は何度も何度も計算を重ねてきたはずだと推測する。

「日本政府が言明している通り、危険性のある物質は取り除かれるでしょう。また汚染水のトリチウムの濃度は海水により下がるでしょう。生物の体内への蓄積は、少量でさえ可能性は低いと思われます。というのも、トリチウムは水素の同位体(原子番号が同じで質量数が異なる元素)の一つに過ぎず、生態系の中では個別の動きをするからです。また海の生物が、自らの活動のために、他の同位体よりも多くトリチウム吸収するということを示す学術的根拠はありません。ですから、トリチウムが、特定の生物の体内に高い濃度で取り込まれるという可能性は基本的には排除されます」。

しかし、環境保護団体を納得させるだけの論拠はあるのだろうか?「スプートニク」は、この問いをロシアの環境政党「緑の党」のルスラン・フヴォストフ党首に投げかけた。

フヴォストフ氏は、福島原子力発電所の事故は、すべての先進国が安全で再生可能なエネルギーに移行し、その発展に寄与すべきであるということを改めて証明するものとなったとの考えを示している。

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一方、日本政府が高い放射性物質を含んだ水を太平洋に放出すると決めたことについて、フヴォストフ氏は、「地球全体の環境に対する意識的な犯罪行為である」と述べている。

「太平洋は巨大な海洋であり、地球の生態系全体に影響を与えます。日本は、先進国であり、高い技術を誇る国でありながら、事故後10年の間に汚染水からすべての有害物質を完全に取り除くことができるようなフィルターを開発することはできませんでした。そして、何年か後のある日、カムチャツカやその他の海辺に水産物の死骸が散乱するのを見て驚くことになるのです。その責任を負う人はいません。わたしたちは日本大使館の側でピケを張り、要請文を送り、すべての人にこの『世界的な環境ジェノサイド』について知ってもらうため、ありとあらゆる方法を利用するつもりです」。

日本の政府委員会はすでに昨年、福島原発の汚染水を海洋放出することを提案していた。しかし、この提案は漁業団体を中心に大きな不満を呼んだ。漁業団体は、そのようなことをすれば、この海域で獲れた水産物を買う人はいなくなるとして懸念している。

現在、汚染水は特別な容器で保管されており、海洋放出は2年後に開始する計画となっている。

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