バッハ会長はアスリートたちはオリンピックに出場するという夢を現実のものにすることができるとし、ワクチンの接種は大会における安全な環境を整備するための一つの策となるべきだと述べた。
またIOCは、新型コロナワクチンの接種が遅れている日本に対し、およそ2万人分のワクチンを無償提供する用意があるとしている。
これより前、IOCのジョン・コーツ副会長は、東京五輪は緊急事態宣言が発令されていても実施すると発言していた。コーツ氏は、「緊急事態宣言下で、5競技のテストイベントが実施され、成功した。選手や日本の人たちの安全を守るために整えてある計画はどれも、最悪の事態を想定したものなので、緊急事態宣言の中でも五輪は絶対に開ける」と述べた。ニューヨーク・タイムズのリッチ素子東京支局長がコーツ氏のこの発言を自身のツイッターに引用している。
では、今回のバッハ会長の「犠牲払うべき」発言は何を意図したものだったのだろうか?
「スプートニク」はこれに関して、ロシアの有名なスポーツ評論家のワレリー・ヴィノクロフ氏に見解を伺った。
「バッハ会長の言葉は文字通りに受け取るべきものではありません。犠牲者はすでに出ています。何よりもまず、観戦することができなくなるであろうスポーツファンたちです。3月に日本政府が、海外からの一般観客の受け入れを断念すると決定したことについてコメントしたときにも、バッハ会長は同じ言葉を用いています。スポーツファン、選手の友人や家族の落胆に大いに共感し、これは皆にとっての大きな犠牲であると発言しました。実際のところ、五輪を開催するにせよ、しないにせよ、一番の「犠牲」となるのは日本経済です。五輪大会は、ファン、観客、観光客など、数十万人が集まる国際レベルのイベントです。これに訪れる数十万の人々がホテルに滞在し、交通機関を利用し、カフェやレストランで食事をし、買い物をします。それは莫大な金額で、大会を開催する国の経済に一定の効果をもたらすものであり、開催国もこれに期待しています。日本はすでに五輪の準備、そして延期で多大な資金を投じてきました。今、計画されているような形での開催で、この出費を補填するというのは夢のような話です。加えて、開催でコロナが蔓延するリスクもあり、また五輪が開催されたとしても、世界規模のスポーツの祭典にならないのは言うまでもありません」。
また最後にヴィノクロフ氏は、IOCと日本政府が五輪の開催を懸命に進めようとしていることについて言及し、両者が開催を主張するのは、莫大なスポンサー契約があるとはいえ、けしてお金のためだけではなく、パンデミックによって引き起こされた全世界的な禍乱よりも重要だとされる五輪が持つ価値を守ろうとしているのだと指摘した。
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