「スプートニク」はこの矛盾した世論調査の結果に関して、専門家に話を聞いた。日韓双方の国民は、互いへの嫌悪を残ち続けているものの、同時に人々は隣国との間でよりよい関係を築き、「仲良くなりたい」という望みは持っているのである。
復讐心
ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センターのコンスタンチン・アスモロフ主任研究員は、韓国人が日本人に対する好感を持つのを妨げているのは、歴史に対する認識の違いだけではなく、「勝てない」ことへのコンプレックスだと述べている。
「戦争での勝利や待ち望んだ解放というものは、普通、本人が参加して達成されるものです。しかし、35年にわたって続いた日本による朝鮮半島の植民地時代(当時はまだ南北に分断されていなかった)は、事実上、朝鮮人たちが参加しないまま終焉しました。戦争は第二次世界大戦における日本の降伏によって終結し、それにより朝鮮半島は日本の統治から自由になったのです。韓国人は(占領からの解放を勝ち取ったという個人的な貢献に対する)誇りを持てずにきたことから、日本に復讐したいという気持ちを払拭できずにいます。日本人に、公の場で過去の罪をできるだけ長く懺悔させることで、『日本人に勝利したい』という気持ちがあるのです」。
加えて、植民地時代は、朝鮮の国民に対して日本の権威主義的な政治が行われていたものの、同時に高い経済成長と朝鮮人の寿命の延伸など良い兆候も見られた。
アジアの発展計画の一部としての植民地主義
アスモロフ氏は、以上のような理由から、日本による韓国の植民地支配は一義的には評価できないと指摘する。
「日本の統治下で韓国人のアイデンティティが失われましたが、一方で植民地支配は大東亜共栄圏の建設という構想の一部でもありました。日本は、東アジアが欧米の支配から抜け出し、アジア諸民族の『共存共栄』を図ることを目的に、この大東亜共栄圏を提起し、推し進めていました。つまり、朝鮮人たちは、抑圧されていただけでなく、日本社会に同化してもいました。つまり、日本人は朝鮮人を日本人にしようとしていたのです。ですから、韓国でも(きわめて稀で、功を奏したとは言えないながらも)、日本の植民地がもたらした効果について指摘する声も聞かれます。日本の植民地支配がなければ、朝鮮半島はソ連の『共産主義の影響』を受け、韓国も北朝鮮と同じような道をたどることになったかもしれないという意見です」。
一方、世論調査の結果からは、日韓いずれの国民も、過去の「悪霊」から解放されたいと願っていることが分かる。
経済が歴史的な負のイメージを払拭する
今回の世論調査では、韓国人の78%、日本人の64.7%が、両国政府は協力関係構築のためにさらに努力すべきだと答えている。
この数字は、韓国人の感情の中では、ときに歴史的な憎しみよりも、経済的な合目的性が優勢であることを示していると指摘するのは、ロシア科学アカデミー東洋学研究所、朝鮮・モンゴル部長で、大阪経済法科大学の客員教授を務めるアレクサンドル・ヴォロンツォフ氏である。
「現代の韓国は(テクノロジー分野で驚異的な成功を収めているにもかかわらず)、客観的に日本の権威を認めています。韓国経済の奇跡的成長は、日本の投資と日本の技術の借用によって成し遂げられたものだからです。経済やテクノロジーの分野において、日本が多くの国で『スーパーパワー』と位置付けられているのに対し、韓国人自身が自分たちを『ミドルパワー』と呼んでいるのも偶然ではないのです」。
これが、日本が韓国人にとって魅力的な国であり続けている理由の一つである。つまり、韓国人にとって、日本は、仕事をしお金を稼ぐのに韓国よりも大きな可能性を秘めた国となっている。しかし、両国間の歴史的な対立により、その可能性ははるかに狭まっているのである。
過去を払拭するのに重要な強いリーダーの役割
日韓関係において、デリケートな問題を避けるのは困難なことであるが、強い意思を持った優れたリーダーが出てくれば、双方に妥協可能な解決策を見出すことができるとヴォロンツォフ氏は指摘する。
「金大中大統領(1998〜2003年在任、ノーベル平和賞受賞)は世論に流されることなく、日本との関係を好転させました。双方の文化の受け入れに関する重要な政治的コンセンサスが達成されたのも金大中大統領政権下のことでした。また両国はサッカーのワールドカップの共催も成功させました」。
両国の関係を今後より良いものにするためには、こうした肯定的な経験が、憎しみという過去の重荷を軽減するものとなるだろうとヴォロンツォフ氏は締めくくっている。