新型コロナウイルス

新しい現実でのオリンピック マスクとPCR検査と数十億人のファンのための中継と

7月23日、東京では、緊急事態宣言の中、ついにオリンピックが開幕する。日本政府と組織委員会は新型コロナウイルスの感染防止に向け、前例のない措置を講じている。今回のオリンピックのスローガンは「安心、安全」である。パラリンピックを含めた今回のオリンピックには、当初18万人が参加を予定していたが、最終的には200カ国から7万8,000人が参加する。ほとんどの競技は無観客で行われることから、およそ155億ドル(およそ1兆7,000億円)かけた東京五輪は、オリンピック史上もっとも静かな祭典になるものと見られる。
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新たな現実:PCR検査とマスクとソーシャルディスタンス

7月14日、7人制ラグビー女子ロシア代表チームが日本入りしたが、入国時に行われたPCR検査で、チームのマッサージ師が陽性判定を受けたことから、メンバー全員が数日間、隔離されることとなった。メンバーたちが隔離施設を離れることができたのは、PCR検査で陰性が確認されてからである。

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これまでにも、ウガンダ、セルビア、イスラエル、リトアニアの選手から、新型コロナの陽性者が出ているが、このことは、あらゆる安全措置を厳しく遵守し、絶えず検査を行うことでしか、コロナの感染を予防することはできないということを証明している。

7月13日に開村した中央区晴海にあるオリンピック村を生活拠点とするすべての参加者は、毎日、PCR検査を受けることになっている。マスク着用を義務付けられ、トレーニングと競技参加時、食事のとき以外ははずしてはならないことになっている。加えて、24時間営業している食堂では2メートルのソーシャルディスタンスを遵守することが定められている。これらの規則に違反した場合は出場停止処分を受ける可能性がある。また参加選手、関係者はもちろん、国際オリンピック委員会のメンバーや記者(合わせて6,000人)に厳しい移動の制限が課せられる。加えてテレビ・放送関係者は17,000人に及ぶ。通常なら、競技の行方に熱狂的に反応し、選手たちに熱い声援を送り、感動のハグやキスに湧く多くの観客がいるはずだが、それがほぼいない状態となることから、今回のオリンピックは史上もっとも静かなものになる。しかしその代わり、今大会では中継に大きな力が入れられることになっている。

オリンピック開幕前に刻まれた記録

国際オリンピック委員会の発表によれば、テレビやその他のデジタル技術、クラウド技術により、50億人が大会を観戦することができるという。これはオリンピックの世界新記録である。オリンピック放送機構(OBS)は超近代的な革新技術を用いて、オリンピックをより観客に近いものにしている。

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オリンピック放送機構は異なるフォーマットの中継を9,000時間以上行うことにしているが、これは2016年に開かれたリオ・デ・ジャネイロ五輪のほぼ30%多い時間数となっている。また放送の大部分が、多数のカメラを用いた生中継となる。しかしそれだけではない。たとえば、陸上の競走種目では、選手が最高速度に達した瞬間を見ることができる。またアーチェリー競技ではマイクロセンサを使って、選手の心臓がどんなリズムで動悸しているのかが分かるようになっている。さらに水上競技では、観客席からは見ることができない水中の様子をカメラが捉える。加えて、バスケットボールや陸上競技で多くのサプライズを約束している。東京五輪では合わせて339個のメダルが争われるが、そこには久しぶりに正式種目に復帰した野球やソフトボール、また新種目として採用された空手、サーフィン、スケートボード、スポーツクライミングが含まれている。

2032年のオリンピックの開催地

7月20〜21日にかけて、ホテルオークラで第138次IOC総会が開かれ、2032年の第35回オリンピックの開催地が選ばれた。普段は、次の五輪の開催地の決定については、大勢のジャーナリストが見守る中、大々的に発表されるが、今回IOCは取材する記者の数も制限した。しかし今回はセンセーションはなかった。開催地選定委員会は2月に、豪州のブリスベンを2032年夏季五輪の優先候補地に選んでいた。

もちろん、この大会の開催までにはまだまだ時間があり、このときまでに世界はワクチンの助けを得て、新型コロナウイルスに打ち克ち、パンデミックは過去のものになっているよう願いたい。しかし、2022年2月に北京で開かれる冬季五輪、2024年にパリで開かれる夏季五輪までにそれが現実のものになるかどうかは誰にも保障できない。そのときには、厳しい規則と規制の中で開催された今回の東京五輪の経験がきわめて必要なものとなるだろう。

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