最も公平なオリンピックか、それともまだなのか?
100年間、スポーツの世界に女性の居場所はなかった。女性が高いレベルのパフォーマンスをしたり、大会で優勝したりする必要はなく、女性は中庭でスポーツをやっていればいいと考えられていた。そんな余暇スポーツのための服装は当時の典型的な普段着、つまり、動きを制限する決して快適とは言えない服だった。女性アスリートが大会に積極的に出場するようになった今でも、女子選手の服装の問題はなくならない。ユニフォームのデザインでは実用性や快適性よりも「美しさ」や「観客ウケ」が優先されているのだ。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長によれば、今回の大会は史上初のジェンダーバランスのとれたオリンピックとなるという。平等を確保するため、大会ルールの変更まで実施した。新しいルールでは、オリンピックに出場する全206チームが各チームに最低1名の女性選手を擁することを義務づけられ、開会式では性別の異なる2名の選手が旗手になることが認められている。旗手を男女二人のペアにすることは義務ではないものの、IOCは各チームにこの制度の活用を推奨している。バッハ会長は「男女平等はオリンピックの新しい現実だと強調しなければならない」と述べた。
出場者数では平等が実現したものの、女性アスリートは男性が夢にも思わないような困難に今も直面している。女性アスリートはライバル選手だけでなく、日常的な性差別とも戦わなければならないのだ。こうした差別は周囲の人々の不適切な行動や制度のあり方に現れている。例えば、オリンピックでは、女子競技は男子競技よりもテレビ放送時間が短いことが多い。この問題は極めて深刻で、IOCは東京オリンピック前に競技のテレビ中継のルールを別途定めなければならなかったほどだ。
所得格差
男女が同等の収入を得ているのは全種目のうち83%に過ぎない。
女子の選手権が「目に見えない」種目さえある。例えば、女子サッカーだ。女子サッカーは男子と同時に登場したにも関わらず、初のバロンドールが女性に授与されたのは2018年のことである。サッカーの女子選手は常に嘲笑や性差別的なジョークに晒されているが、やはり最大の問題は収入の不平等である。
国連によると、リオネル・メッシの年収は、世界のトップ 7リーグに所属する女子選手1693人全員の給料を合わせた金額の2倍である。
セクシャライゼーションと動きにくいユニフォーム
女子競技は「二流」だという考え方は女性アスリートの服装要件にも影響を与えている。多くのスポーツ関係者は、女性は「より女性らしい服装」でプレーすべきだと考えており、FIFAの元会長のゼップ・ブラッター氏もそのように語っていた。
80年代や90年代には、エロティックなTennis Girlのポスターや、バレーボール選手のお尻をクローズアップしたポスターが人気を博した。今では市中の売店のウインドウでもそんなポスターは目にしなくなったが、それでも女性たちはその名残に今も苦しんでいる。例えば、女子ビーチバレーの標準的なユニフォームはビキニパンツと短いトップスなのに対し、男子は長めで余裕のあるショートパンツとタンクトップの着用が認められている。男子は背中に名前と国名が表示されているため、どんなに暑い時期でもタンクトップでの出場が許されているのだ。一方、女子の場合、名前や国名はショートパンツ、ビキニパンツ、レギンスのお尻のあたりや股の上に表示されることが多い。
さらにすごいのがアメフト女子リーグ「Legends Football League(旧Lingerie Football League)」で、女子チームは下着だけで試合に出場する。
たとえIOC公認の公式スポーツであっても、女子ビーチハンドボールのノルウェー代表のように、女子選手が露出を強いられることがある。ノルウェー代表チームは2017年以降、ショートパンツでプレーする権利を求めているが、欧州ビーチハンドボール連盟のルールには女子のショートパンツのサイドの幅は10cmを超えてはならないと定められている。ノルウェー側は選手の「不適切な」外見に対して罰金を支払うことも厭わなかったが、それでもショートパンツ着用の許可を得ることはできなかった。
その結果、ビキニではなくショートパンツで試合に臨んだチームメンバー10人全員にそれぞれ150ユーロの罰金が科された。
他のアスリートや国内の政治家もノルウェーのチームを支持したが、今のところ状況を変えるには至っていない。ノルウェーのアビド・ラジャ文化大臣はTwitterに«Is this an expression of international domination of men with a special view of women?»とツイートした。
何を変えることができるのか?
2020 年、日本オリンピック委員会(JOC)を中心とする中央競技団体は、盗撮や性的動画の拡散の撲滅に向けた声明を発表した。この決定は、女性アスリートの性的画像の違法流通に対処するためのものである。しかし、盗撮や性的画像投稿を直接取り締まる法律はまだ存在していない。
その一方で、国内外のメディアは女性アスリートの外見を強調する報道を続けている。
〇女神のようなカザフスタン美人旗手 気さくな舞台裏の様子が話題に「天国ですか?」
〇可愛さもメダル級! 走り高跳びのウクライナ代表、ユリア・レフチェンコから目が離せない♡
〇五輪屈指の注目美女。ダリア・クリシナの肉体美にひれ伏したい。
〇美しさもスゴい!バドミントンのデンマーク代表 アレクサンドラ・ボイエから目が離せない!
〇9頭身のスタイルに唖然! 美人柔道家、ダリア・ビロディドが美しすぎる。
競技でのパフォーマンスや個人的資質よりも外見への関心が大きい限りは、ビーチハンドボールであれ、体操であれ、女性アスリートたちは自分で自分の権利を守るしかない。