小山田圭吾さんをめぐるスキャンダルはなぜ国際的なものになったのか?

CC BY 2.0 / Joi Ito / Keigo Oyamada小山田圭吾さん
小山田圭吾さん - Sputnik 日本, 1920, 21.07.2021
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東京五輪の開幕を数日後に控えた日本で、また新たな騒動が浮上した。東京オリンピック・パラリンピックの開会式の作曲を担当していた小山田圭吾さんが、かつてあるインタビューで子ども時代の面白おかしいエピソードとして、障害を持つ同級生をいじめていたと告白したことがメディアで取り上げられたのである。このエピソードが外国のメディアでも詳細が報じられるにつれ、憤慨の波はますます強くなってきている。小山田さんは謝罪し、楽曲担当を辞任するとしたが、なぜ今回のケースはこれでは不十分だと言われる可能性があるのか、「スプートニク」が取材した。

メディアに知られなければ、罪ではない?

1990年代、当時人気絶頂だった小山田圭吾さん(52)は、日本の音楽雑誌からのインタビューに応じた中で、障害のある同級生に本人の大便を食べさせたり、他の生徒たちの前で自慰を強要したりしたという。この恐ろしい過去の話は、何年も前の日本の音楽雑誌に印刷されたものであるが、今回、小山田さんが音楽を担当したオリンピックの開幕まで1週間というときになって、突如これが表に出てきたのである。

​インタビュー記事が掲載されたのは、1994年1月発行の「ロッキング・オン・ジャパン」(ロッキング・オン)と95年8月発行の「クイック・ジャパン」(太田出版)。

​この衝撃的な告白が掲載されてからすでに30年ほど経過しているが、小山田さんは最近まで、このことを問題とは考えておらず、憤慨した読者が小山田さん自身や彼の息子、日本オリンピック委員会のTwitterアカウントに怒りのつぶやきで攻撃するようになるまで、謝罪をする必要があるとも、この間に自身の態度を改めたことを表明すべきだとも思わなかったのである。

小山田さんの辞任を求めるメッセージが数千件にのぼり、また世界でも数十の記事が掲載されたのを背景に、小山田さんはTwitterで、過去の行いを反省し、「不快な印象を与えてしまうことを心から申し訳なく思います」と呟いたが、その言葉が心から出たものであると信じるのは難しい状況となっている。


被害者の苦しみと日本のイメージに対する打撃

小山田さんの過去のイジメが発覚したことは、世界中の彼のファンにショックを与えただけでなく、オリンピックに関与するさまざまな国の数百万の人々の心を傷つけることとなった。

「このような差別的で暴力的な行動を起こした者が、オリンピック・パラリンピックに参加するのに適した人物だと言えるのだろうか?」

​この記事を執筆している時点で、Yahoo!ニュースへのコメントの数は1万件を超えている。そのうちのいくつかを紹介しよう。

「オリンピックで小山田の曲が流れれば日本は世界中に障害者にイジメしたことを容認した国として醜態を晒すことになる。ましてやパラリンピックで小山田の曲を流すなど常軌を逸している。」

「彼は被害者に対して謝罪し、それを受け入れてもらえているのだろうか?それであれば、組織委員会はそう説明すれば良いのにしていない。何故だろうか?」

関東地方の障害者スポーツ協会は、小山田さんは謝罪するだけでなく、懺悔の気持ちを表し、周囲の人々に、今の自分はもうあの頃の自分とは違うということを示す必要があったのではないかと指摘している。

ファン (アーカイブ写真) - Sputnik 日本, 1920, 24.06.2021
「結構シュールな光景だ」 アルコール、セックス、外国人観客のいないオリンピックはなぜ怒りしか生まないのか
「パラリンピアンは自身の障害も含めて、人間関係や社会など多くのハードルや差別を超えて、これから競技に臨みます。オリンピアンもまた同じく、ダメな自分や弱い自分を乗り越えて、出場します。少なくとも、“自分を振り返ることのできない人物”にオリパラの舞台に立つ資格はないのではありませんか。小山田さんがインタビューに応じた時から成長されたのかを知りたいと思います。」

雑誌「ロッキング・オン・ジャパン」に掲載された記事で小山田さんにインタビューを行った当時の責任者、山崎洋一郎氏は、その後、編集長になっているが、編集長はジャーナリストとしての過ちを認め、自身のブログで謝罪した。

同編集長は掲載誌が出た当時、自分が小山田さんのインタビューを行ったとし、「インタビュアーとしての姿勢、それを掲載した編集長としての判断、その全ては、いじめという問題に対しての倫理観や真摯さに欠ける間違った行為である」と記した。そして「傷つけてしまった被害者の方およびご家族の皆様、記事を目にされて不快な思いをされた方々に深くお詫わび申し上げます」と謝罪した。


社会が超えてはならない一線

小山田さんの今回の突然のイジメ発覚は、このような展開が待ち受けているとは思いもしなかったオリンピックの主催者たちにも少なからぬ打撃を与えた。

東京五輪 - Sputnik 日本, 1920, 02.06.2021
セックスのないオリンピック 選手村では「母国に持ち帰っていただく」ためのコンドームが配布される
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は、7月17日に記者会見を開き、「小山田さんが謝罪されたということは十分、理解している。事実、当初わたしたちは、雑誌での発言について知らなかった」と述べた。

しかしこの後の小山田さんを擁護するような行動が、国内外で困惑を呼ぶこととなった。武藤事務総長は、小山田さんに役職から退いてもらう、あるいは小山田さんの楽曲の使用をやめる考えはないとの考えを明らかにした。「小山田さんには引き続き貢献してもらいたいと考えている」と述べた事務総長は、「現時点に置いて、彼は十分に謝罪し、反省をしている。また本人もより高い倫理観を持って行動したいと語っている」と付け加えた。

欧米諸国では、イジメの疑惑があっただけでも、たとえばスターは契約を破棄されるのはもちろん、人としての尊敬を失うことから、今回のような対応は理解されがたい。

しかし、残念ながら、オリンピック組織委員会も小山田さん自身も、現時点では、この行動が人間の尊厳を踏みにじり、善のイメージに矛盾することであり、それが謝罪だけで済まされない過ちであったことを認識していない。ここに、たとえ才能がある人間でも超えてはいけない一線があるように思われる。


苦難続きのオリンピック

延期が決まった東京五輪の開催がパンデミックの条件下で開催されると発表されてから、組織委員会がこのような騒動に巻き込まれるのはこれが初めてではない。

池江璃花子選手 - Sputnik 日本, 1920, 12.05.2021
「自らの責任をきちんと果たして頂きたい!」 なぜ、選手たちがオリンピック開催に関する決定を下さねばならないのか?
2月には組織委員会の森喜朗前会長が、女性蔑視問題発言で辞意を表明。この事件を機に、組織委員会は、代表者、高官らの発言により注意深く対応するようになった。

しかし、その1ヶ月後、オリンピック・パラリンピックの開閉会式の企画・演出を総括していたクリエイティヴ・ディレクターの佐々木宏氏が、開会式で女性タレントの渡辺直美さんにブタの衣装を着せるなどという演出案を出したことから、辞任することになった。

そして1週間ほど前には、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が、東京で開いた記者会見で日本人を中国人と言い間違え、大きな批判を呼んだ。

東京五輪はもともと、自然に対しても、そして周囲の人々に対しても、あらゆる意味で世界一環境に配慮したものにすると謳われていた。今回のオリンピックのコンセプトに、「多様性と調和」という価値観が込められているのも偶然ではない。まもなく開幕を迎えるオリンピックが滞りなく、計画通りに開催され、参加者たちは尊敬と安全策を忘れずにいてくれるよう期待したい。


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