演習には1万人以上が参加した。ロシア側からは東部軍管区の自動車化狙撃部隊の隊員と戦闘機Su-30SMが、中国側からは人民解放軍の陸戦部隊と空軍、戦闘機J-16、ドローンが参加した。
また、全部で装甲車両200台、大砲90台、軍用機とヘリコプター100機超も配備された。演習の第1段階では、合同司令本部は予定された合同オぺーレーションとソリューションの研究、部隊の連携を実施した。第2段階では地上および空域での直接的な合同軍事行動が取り組まれた。ロシア国防省は演習の様子をユーチューブで公開した。
米国のオンラインマガジン「The Diplomat」は、「これらの演習はロシアと中国の戦略的パートナーシップの拡大と強化を明らかに物語っている。2国間の軍事的緊張緩和や対外的な安全保障条件の部分的な一致、指導部の見解の統一、防衛分野におけるバランスの取れた経済条件といった一連の要因が、『事実上の軍事同盟』と呼ぶことができるロシアと中国の軍事的・政治的関係を成熟したレベルへ引き上げると考える専門家が存在する」と報じている。
サイト「JBpress」の記事の中で雑誌『近代ビジネス』の近藤大介編集次長は、「一見してこれらの合同演習は日本との共通点はないように思えるが、しかし、特に日本はこうした事態の進展のもとで『次の攻撃対象』となるリスクを負っている。これは、中国とロシアの『準同盟』の次の攻撃が北方領土方面に向けられる可能性が高いことに関係している」と考察している。
スプートニク:今回の演習とアフガニスタンの事態に何らかの関連はあるか?
シブコフ氏:両国は、演習はテロの脅威を取り払うことを目的としていると強調している。そのため、急進的なタリバンの側からテロ攻撃が仕掛けられた場合、なんらかの形で相互行為が取り組まれる可能性は排除されない。もし、中国が重視するプロジェクト「一帯一路」に対する脅威が生じた場合、軍事衝突の回避で中国政府はパキスタンを通じてタリバンに影響を与える可能性がある。ロシアに関しては、同国はアフガニスタンの事態で軍事的に介入することは回避すると考えらえるが、それはこうした考えがロシア社会では理解を得られないからだ。他方で、アフガニスタン自体の情勢は現在非常に難しいものがあり、今後、事態がどう進展していくか予想することは困難だ。タリバンは非常に多くのグループに分かれており、攻撃的な集団がある一方で、高いインテリジェンスを持つ集団も存在する。イスラム教の他に、彼らには共通のイデオロギーや政治的な基盤は存在せず、おそらく、タリバンによってアフガニスタン全土が制圧された後には、当地では激しい権力争いが始まることになる。
シブコフ氏:演習は、そもそも防衛的な性格をもっている。しかし、もし米国の軍事ドクトリンでロシアと中国を主な地政学的な敵と名指しするなら、両国は何らかの手段で戦略的プランを調整する必要に迫られる。今回の演習はそのことには関係していない。
スプートニク:ロシアと中国の軍事的協力は日本の懸念となるか?
シブコフ氏:両国の緊密な軍事的・技術的協力は、軍事力の強化を招き、隣国は常に警戒心を抱くことになる。同様にロシアは、日本の領土内に米国の地上ミサイルが配備されることを懸念しているのは間違いない。日本が異議を唱えるクリル諸島に関しては、ロシアとの交渉は中断してはいるが、両国には対話を継続する用意がある。今日、日本とロシアの間で軍事紛争が生じる前提はまったくない。しかし、時折、過激な日本の政治家の側からこの問題の解決には軍事的手段しかないとの見解が示される。私はこれに対し、軍事によってロシアと日本の領土問題を解決しようとするさまざまな試みは阻止されると言いたい。南クリルで構築された防衛および安全保障システムが、実力行使によって諸島問題を解決しようとする試みを無意味なものにする。しかし、このことに中国は関係ない。中国には日本との間に領土に関わる論争があるが、同じように、そのことにロシアは関係していない。
たとえば、2019年に日本維新の会の丸山穂高議員が「北方領土」問題の解決には「戦争」が必要と発言したことは記憶に新しい。この発言は大きな問題となり、当時の菅義偉官房長官でさえこうした考えを非難した。同官房長官は、この発言は政府の見解とはまったく相容れないものであり、日本政府は今後もロシアとの外交交渉を継続するつもりであると強調した。