2001年の秋、アフガニスタンの旧タリバン政権に残された時間は数ヶ月。米空軍の支援を受けた北部同盟は、タリバンを地下に潜らせ、一部を隣国パキスタンに追いやった。米空軍とその同盟の軍用機が補給部隊を効果的に破壊したため、タリバンの武器や装備はかなり不足することになった。しかし、タリバンはその後、アフガン全土で大規模なゲリラ戦を展開し、欧米の軍用ハイテク機器をどんどん入手していった。さらに、パキスタンからの武器の供給も強化されていった。
2021年5月にタリバンが大規模な攻勢をかけた時、戦闘員たちはアフガン政府軍と同等の装備を手にしていた。タリバンの士気も上がった。そして、米軍の撤退が始まると、アフガン政府軍はすぐに崩壊した。米国製の武器も、西側による政府軍への長年の訓練も役に立たず、部隊全体が武器や装備を持ってタリバンに投降していった。
本格的な軍備
タリバンは、国境を越えて他国、特にイランに渡ったものを除く全てのアフガン政府軍の装備を手に入れた。「ザ・ミリタリー・バランス」の年次報告書によると、政府軍は中戦車T-55とT-62が40車両、「MSFV」装甲兵員輸送車640両、「マックスプロ」装甲車200両、戦闘用車両「ハンヴィー」数千台を保有していた。さらに、自走多連装ロケット砲BM-21「グラード」を最大50基、D-30 122mm榴弾砲を85基、M114A1 155mm榴弾砲を24基、約600基の迫撃砲など、かなり本格的な火砲を有していたが、今やこれらの武器はタリバンのものとなった。タリバンは、西側製の小銃数万丁、数トンの弾薬、夜間照準器、サーマルイメージャー、特殊装備、軍服、防護服なども手にしている。
タリバンが持つ軍用機は、近隣諸国にとって大きな脅威となっている。米国がアフガニスタンに侵攻したのは、2001年9月11日にタリバンが複数の旅客機をハイジャックし、米ニューヨークの高層ビルに衝突したアメリカ同時多発テロ事件がきっかけだった。
拡大のリスク
現在、タリバンは他国へ侵攻する計画はないと主張している。しかし、近い将来にタリバンが何を決定するのかは分からない。武器の山は、タリバンの指導部に武力面で自信を与え、成功を積み重ねていきたいと思わせるかもしれない。
軍事政治学者協会の専門家であるオレグ・グラズノフ氏によれば、タリバンの仲間はタジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンを含む中央アジアの全ての共和国に潜んでいるという。
グラズノフ氏は、以下のように語っている。
「タリバンは、アフガニスタンにとどまらず、中央アジアにイスラム国家のベルト地帯を作るという壮大な計画を持っていると思われる。タリバンは20年以上も戦い続けているため、より多くの味方が増えるのは彼らにとってメリットであり、自分たちの仲間を置いておくことは重要なのだ。中国も警戒する必要があると思う。新疆ウイグル自治区が急に燃え上がる可能性がある。アフガニスタンが占領されたことで、これから安全保障体制がどれほど崩壊するか、想像すらできない。米国人はやりこなすことができず、飛び去ってしまった。米国から遠く離れているし、どうでもいいのだろう。しかし我々、イラン人、中国人、あるいはパキスタン、その他の全ての国々、つまり我々全員がこの混乱を収拾することになるだろう」。
関連記事