アメリカの20年に及ぶアフガニスタン戦争の終結にあたり、バイデン大統領は国民向けに演説し、「私たちは遂行不可能な課題を掲げるのではなく、明確で達成可能な目標を掲げなければならない・・・他国の体制転換のために大規模な軍事作戦を行う時代は終わった。このような考え方や大規模な部隊投入をやめることで私たちはより強くなり、より効果的に国家の安全を保障できるようになる」と述べた。
米国防省のデータによると、2001年10月以降、アフガニスタンに駐留した米軍兵士の総数は80万人であり、そのうち2300人以上が死亡し、2万660人が負傷した。アメリカが20年間でアフガニスタンに投じた費用は2兆2600万ドルを超える。
しかし、ほぼ一瞬にしてガニ大統領の親米政権は崩壊し、タリバンが政権に就いた。このことが示しているとおり、アフガニスタンに異なる国家構成を構築しようとしたアメリカと同盟国のあらゆる努力は無に帰したのである。
一方、アメリカが国外で国家建設に取り組んでいる間に、国内問題はアメリカ社会を大きく揺るがし、今、そのツケを払うときがきている。
高等経済学院欧州国際総合研究センターのドミトリー・ススロフ副所長はスプートニクのインタビューで次のように語った
「アメリカの外交政策は、地政学的な優先課題の変化と国内社会の分断を背景に、大きな転換点を迎えています。アメリカ政治のひとつの時代、全世界を自国の価値観に沿って変えようと試みたひとつの時代が終わろうとしています。事実上の戦略変更はすでに起こっています。アメリカは、中国とロシアとの根源的でシステミックな対立に移行しつつあり、今後、それを基盤に同盟国や諸外国を団結させようとするでしょう。おそらく、アメリカは中東でのプレゼンスを弱め、日本、韓国、インド、QUADなど、太平洋地域のパートナーとの同盟関係を強め、中国とロシアへの牽制として台湾やウクライナにより注力していくと思います。これは、グローバル冷戦戦略への移行を意味します。一方で、ワシントンは国内問題により注力するため、グローバル問題への関与の度合いを見直しつつあります。アメリカでは内政危機が深まり、社会が分断され、エリートが両極化しています。政権は新たな冷戦が社会を団結させ、国内問題を解決する助けになるのではないかと考えて新しいパラダイムを模索しています。」
EU外務・安全保障政策上級代表のジョセップ・ボレル氏は先頃、アフガニスタンでの直近の出来事はEU独自の防衛システム構築の必要性を明確にしたと語った。ボレル氏によると、外的脅威とその対処法に関する共通ビジョンの概要と共同防衛事業の計画を規定する『戦略コンパス』コンセプトの素案が2021年10月〜11月に策定されるという。この新たなコンセプトは安全保障と防衛問題における今後5年〜10年のEUの路線を決定するものとなる。コンセプトの素案では、兵員5000人規模の欧州緊急即応部隊の創設まで提案されている。EUの防衛能力強化には今後数年間で80億ユーロが拠出される計画だ。これは、防衛と安全保障問題においてEUがアメリカを顧慮せず、独立性を強めていく試みに見える。
バイデン大統領はEUと調整せずにアフガニスタンから部隊を撤退させ、EUを移民やテロの脅威といった新たな脅威に直面させたと、ドミトリー・ススロフ副所長は言う。「EUは、自分たちはもっと尊重されると考えていました。バイデン大統領のこのような行動は欧州にとっては衝撃であり、アメリカにとって欧州との関係が最優先ではなくなったことの指標だと捉えられました。しかし、ボレル氏が発表した戦略的自律が現実のものになるかは大きな疑問です。欧州にも中国に対する懸念はありますが、EUは中国との関係において経済協力と政治的対立を組み合わせていくと思います。政治的対立ではアメリカと部分的に協調しつつも、アメリカの路線を踏襲することはありません。貿易経済と地政学を分けて考える新たなデカップリング政策です。この政策はすでに対ロシアで一部実現しています。欧州はロシアの主要な貿易相手のままですが、政治面では溝は深まっており、双方とも、どんどん対話から遠ざかっています。」
アメリカのメディアが先頃伝えたところによると、中国の習近平国家主席はバイデン大統領との初の対面会談の提案を断ったという。
両者の電話会談は9月10日に行われ、両国の苛烈な競争が本格的な衝突に発展することの阻止のほか、気候問題や感染症予防での協力の可能性が話し合われた。