公園は長年永久凍土を研究するセルゲイ・ジモフさん(66)が作り上げた自然保護区で、北極海から南へ約150キロの町、チェルスキーに位置する。現在、総面積は約20平方キロメートルの公園にはトナカイやヘラジカ、バイソン、ヒツジなど9種類の大型草食動物が生息している。
ジモフさんがこのプロジェクトを開始したのは1988年のこと。ジモフさんは、この地に更新世後期(約12万6000年前から1万1700年前)にユーラシア大陸に広がっていたマンモス・ステップのような土壌や景観を再現し、生産性の高い生態系や牧草地を作り出したいと考えている。
ジモフさんによれば、当時のステップ地帯の生態系こそが地球温暖化抑制の鍵になりえるという。地球温暖化で永久凍土が融解すれば、マンモスの骨や古代の植物など、数千年間眠っていたあらゆるものが融解し分解され、膨大な量の温室効果ガスが放出されるおそれがある。また、それは欧州連合(EU)の産業における排出量に匹敵するか、あるいはそれを上回る可能性があるという。
公園に放たれた大型草食動物によって土が踏みつけられることで、雪が厚い断熱材の役割を果たさくなり、寒気で土壌が凍結する。実際、ジモフさんが昨年発表した論文では、公園内の土の温度が低下したことが示された。