リスクはない
「米国の放出量(5,000万バレル)に較べると、日本の放出量はわずかです。ですから、これについて懸念することは何もありません。日本政府は国家備蓄を輸入量の90日分程度(IEA基準)の量にすることを目標としています。しかし、9月末の時点で、日本はIEAの基準ベースで133日分を保有しています。つまり、日本はごく一部であれば、放出することができるのです」。
効果はわずか
「いかなる介入も(たとえそれが功を奏したとしても)短期的なものです。効果は1ヶ月も続かないでしょう。しかし、米国は国際協調と同盟国を引き込むということに賭けたのです。これは、彼らが(原油市場に)与えた『刺激』が、全体として、原油価格の引き下げにどのように影響が出るかについての分析です。しかし、この試みはまったく相反する結果を招く可能性もあります。というのも、基礎となる条件がなければ、この介入で持続的な効果は得られないからです。原油価格を低いまま維持するためには、国家備蓄を放出し続けなければなりません。しかし、定期的に備蓄を放出できるという国などないでしょう。またこうした市場への『刺激』は需要の増加を招き、低価格の原油を買おうとする動きが高まり、原油価格は再び上昇します」。
心理効果
「OPECプラスは、石油の採掘についても定期的に合意を結んでいます。しかし、原油価格の高騰は、達成された合意が石油の最大消費者の需要を必ずしも満たしていないことを示しています。ですから、米国は、産油国に対し、好ましくない状況になった場合、アジア諸国は団結してなんらかの措置を講ずる用意があるということをアピールしたいのです。つまり米国は石油の放出だけでなく、今後のOPECプラスとの協議において切り札になりうる心理効果に期待しているのです」。
「米国が中国にも要請したのは、この意義をさらに高めるためです。原油価格の問題は中国にとってはそれほど深刻なものではありませんが、コロナ禍においては、エネルギー危機を実感しました。ですから中国にとっても、これは戦略的な措置となります。しかも、中国はすでに9月に、米国が要請する前に、観測気球を上げ、石油備蓄を放出しています」。