ロシア最大の日本祭J-FEST華やかに閉幕、2年ぶりリアル開催の閉会式に感謝の声

11 月26日、モスクワ市内のホテル「コスモス」で、ロシア最大級の日本文化フェスティバル「J-FEST Autumn 2021」閉会式が開かれた。今年のJ-FESTは初めて、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型で開催され、あわせて12万6000人以上が参加した。日本ファンがリアルで集えるのは、2019年の「J-FEST Summer」以来2年ぶり。コスプレコンテストやカラオケ大会、武道、邦楽コンサートや映画上映など、華やかなステージが繰り広げられ、寿司やたこ焼きの出店も登場。会場は再会の喜びと興奮にあふれた。
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もともとハイレベルなロシアのコスプレイヤー。コロナ発生以降は披露の場がなく、今回のイベントには2年がかりで準備をしてきただけあって、審査は一段と難航した。優勝したのはソウルキャリバー6のナイトメア姿で登場したルカ・フロモイさん。趣味の域を超えて、まるで特撮映画のワンシーンを見ているようだ。
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カラオケ大会で優勝したUsagi Hayashi(本名ヤーナ)さんはMISIAの「逢いたくていま」を熱唱し、完璧な日本語の発音で会場を驚かせた。ヤーナさんは子どもの頃から日本アニメの挿入歌を聞いて歌詞をメモして練習し、大人になってからは歌詞を理解できるように日本語を勉強している。審査員のひとりは「日本のカラオケ大会に出ても優勝できるレベル」とコメントした。
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ヤーナさん「世界で起こっているコロナをはじめとした悲しい出来事、そして私個人にも不幸が重なったこともあり、この歌にはとても感じるものがあって、辛い気持ちにさえなりました。でも、とても悲しい気持ちで歌うのでなく、何か少しでも希望を見出せるように、その気持ちを歌を通して分かち合いたいと思いました。」
J-FESTのゼネラル・スポンサーであるショディエフ国際基金は、J-FESTを含むロシアにおける様々な日本文化イベントのサポートや、日本に関する理解を深めるドキュメンタリー映画の制作に取り組んでいる。また、日本を代表する染色工芸家・久保田一竹氏の没後、作品の散逸を防ぐためコレクションをまとめて買い取り、美術館を救済したことでも知られている。
基金総裁のファタフ・ショディエフ氏は、ロシア日本研究者協会の名誉会長として若手研究者を支援し、令和2年の外国人叙勲で旭日中綬章を受章している。ショディエフ国際基金のオリガ・モナホヴァ所長に話を聞いた。
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モナホヴァ所長「私たちは、ロシアでたくさんの人が日本について知り、日本を愛してくれるようにと思って活動しているほか、日本におけるロシア文化の浸透も支援しています。文化理解を通して距離を縮め、隣人として日露関係を強化することは現代においてとても大事です。今日のイベントが開催できたのは良かったですが、コロナ前までの夏祭り形式のJ-FESTに比べると、物足りないところはあります。あの夏祭りはとても綺麗で、若い人が目を輝かせて参加し、2日間で12万人以上が来場した、記憶と記録に残るイベントでした。私たちのところにも、次のJ-FESTはいつやりますか、と問い合わせがたくさん来て、その反響の大きさに、年を追うごとにJ-FESTのファンが増えていると実感できます。そのことがとても嬉しいです。」
当初、閉会式は11月上旬を予定していたが、開催予定日がコロナ対策の非労働日と重なり、延期を余儀なくされた。J-FESTのプロデューサー、加瀬由希子さん(Japan Art Rainbow LLC代表)は、「理想的な形ではないけれど、関係者の熱い思いがあってなんとか実現できた」と、開会から閉会に至るまでの約2か月間を振り返った。
加瀬さん「これまではお祭り特有のごみごみした雰囲気を作ろうと思ってやってきましたが、今回の閉会式は、コロナ対策の人数制限をしながらも、お祭りの雰囲気もなんとか出せないかと、見極めが難しかったです。オフラインでのイベントは小規模なものをモスクワ各地で開催し、累計で2400人以上が参加してくれました。」
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コロナ禍で変わったことは、いつもであれば日本から招いていたゲストが全く呼べず、ロシア人が中心の舞台になったことだ。しかしそのことで新しい可能性が見えてきた。
加瀬さん「文化に携わる人は本当に苦労しています。例えば武道教室なら、ソーシャルディスタンスを保とうとすると練習できずに、道場から人が離れてしまったり。今回のイベントでは、ロシア人で日本文化に造詣の深い人、コロナ禍でもあきらめずに活動している人とご一緒することによって、たくさん学ばせて頂きました。ロシアの人は変化に強くて柔軟。日本人と違う発想でたくさんのアイデアを出してくれ、パートナーシップも深まりました。」
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今回のJ-FESTは、新しい日本ファンの心もつかんだ。モスクワ市内の旅行会社に勤めるエフゲーニー・リヴォフスキーさんは、最近日本語の勉強を初めたことがきっかけで初参加した。クイズの景品でもらった提灯を大事に抱えながら、「素晴らしい舞台でした。どの席から見ても特に照明がきれいで、裏方の人のフェスティバルへの愛を感じました。せっかく勉強した日本語を日本で使ってみたいけれどまだ行けないので、早く国境が開いてほしいです」と話した。
モスクワから500キロ以上離れた都市クルスクから参加したコスプレイヤーのTorA(本名アンナ)さん。コロナ前は参加しようと思えばできたのに、何度か参加を見送ってしまい、今回の貴重な機会を逃すまいとモスクワにやってきた。
アンナさん「日本文化全体に興味を持っていて、参加できて大満足です。舞台に立ったことで、自分も少しはフェスティバルを盛り上げる役に立てたかなと思うと嬉しいです。今日の機会を作ってくれたこと、フェスティバルを開いてくれたことに感謝しています。」
会場からは、「コロナがなければ日本に旅行に行っていたのに」という声がちらほら。自由に日本に行けない中、参加者にとっては日本の雰囲気に触れる貴重なひとときとなった。加瀬さんは「J-FESTが日本も含めた世界中から人が来てくれるようになるまで、育ってほしい。そのためにはどんなに困難でも、少しずつ前進したい」と語る。J-FEST実行委員会は、早くも来年のイベントに向けて始動する。
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