「その障害があるとしたら、きわめて重大な技術的問題か、露米間の深刻な政治的対立でしょう。この計画に参加しているすべての宇宙開発機関が、国際宇宙ステーションの運用の継続に関心を持っています。というのも、これに代わる施設は今のところ存在しておらず、また国際宇宙ステーションで行われている実験は、実際、将来的に大きな効果をもたらす可能性があるからです。しかし、ステーションの今後について決断を下すのは、宇宙開発機関でもなければ、その幹部でもなく、国の指導者です。今後のステーションへの資金の調達に関する問題は、政治の問題なのです」。
「実験棟『きぼう』には、内部にあらゆる設備が設置されているほか、外部にも、宇宙実験棟外の環境での様々な物体の反応を研究するための機材が取り付けられています。これは協力の可能性を大きく広げるものです。日本はELF(静電浮遊炉)を用いたロシアとの協力の拡大に関心を持っています。簡単に説明しますと、これは、微小重力環境において、2000℃の高温に熱したときに、物質の性質がどのように変化するのかを観察することができる電子レンジのようなものです。これにより物質の新たな特性を発見する可能性が生まれるのです。ロシアは紫外線天文衛星スペクトルUFに活用するための日本の長寿命の固体撮像素子を手に入れることに関心を持っているでしょう。しかし、ロシアの宇宙計画は、米国からの制裁の対象となっています。米国は、宇宙分野での国際協力を禁止してはいませんが、ハイテクの譲渡に関しては制裁がかかっています」。
「ロシアは日本が2024年に予定している、火星の衛星フォボスの探査計画に参加するという可能性もあります。プロジェクトでは、フォボス表面の砂を採取し、地球に持ち帰ることが計画されています。これは、2011年にロスコスモスが試みた火星探査機『フォボス・グルント』が掲げていた課題ですが、このときの試みは、ソフトウェアの問題により、失敗に終わっていました。しかし、宇宙の土壌試料の研究は、2020年代の末に予定されているロスコスモスの『ルナ28』計画として継続されています」。