ロスコスモス社長が日本を訪問 露日共同プロジェクトの可能性はあるのか?

日本人宇宙旅行者である前澤友作氏と平野陽三氏を乗せた宇宙船ソユーズが、12月8日、無事に国際宇宙ステーションにドッキングした後、ロシア国営宇宙開発企業「ロスコスモス」のドミトリー・ロゴジン社長はロシアのメディアに対し、2022年に日本を訪問すると明らかにした。ロゴジン社長によれば、今回の日本訪問は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の招待を受けてのもので、両者は宇宙における露日協力の展望について話し合うことになるとのこと。
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日本は、国際宇宙ステーション計画に参加している14カ国のうちの1つで、JAXAはステーションが建設されて以来、ロスコスモスとの協力を続けており、旅行者を除いて、すでに8人の日本人宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに滞在した。また2008年からは国際宇宙ステーションに、貴重な機材を備えた日本の船内実験室「きぼう」が設置されている。さらに、JAXAの計画では、2022年には若田光一宇宙飛行士が、また2023年には古川聡宇宙飛行士が、それぞれ国際宇宙ステーションに長期滞在する。いずれの飛行士も国際宇宙ステーションに滞在するのは初めてではない。国際宇宙ステーションの運用が2024年12月までとなっていることから(2028年、または2030年までの延長について話し合われてはいる)、それより先の計画はまだ決まっていない。
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宇宙問題の専門家で、「開かれた宇宙」プロジェクトの創始者でもあるヴィタリー・エゴロフ氏は、スプートニクからの取材に対し、「国際宇宙ステーションは2024年以降も運用される可能性があり、そうなるはずだ」と述べている。

「その障害があるとしたら、きわめて重大な技術的問題か、露米間の深刻な政治的対立でしょう。この計画に参加しているすべての宇宙開発機関が、国際宇宙ステーションの運用の継続に関心を持っています。というのも、これに代わる施設は今のところ存在しておらず、また国際宇宙ステーションで行われている実験は、実際、将来的に大きな効果をもたらす可能性があるからです。しかし、ステーションの今後について決断を下すのは、宇宙開発機関でもなければ、その幹部でもなく、国の指導者です。今後のステーションへの資金の調達に関する問題は、政治の問題なのです」。

国際宇宙ステーションが建設されて以来、JAXAは一連の共同プロジェクトにおいてロスコスモスと協力を継続している。2009年には、日本の実験棟「きぼう」で、露日共同による高品質タンパク質結晶生成実験がスタートし、最近、両者はこの実験を2024年12月まで延期することで合意に達した。この高品質タンパク質結晶は、ウイルスや細菌に分子レベルで働きかける、より高い効果を持つ医薬品の開発に必要なものである。行われている実験を基に、ロシアのクルチャトフ研究所の学者らが新たな結核治療薬の開発のためにそのデータを受け取り、無重力空間でタンパク質の生成を行う有意性があることが証明された。一方、国際宇宙ステーションでの実験の成果は、そのデータが収集された実験棟の国の研究者以外も使用することができるとエゴロフ氏は言う。

「実験棟『きぼう』には、内部にあらゆる設備が設置されているほか、外部にも、宇宙実験棟外の環境での様々な物体の反応を研究するための機材が取り付けられています。これは協力の可能性を大きく広げるものです。日本はELF(静電浮遊炉)を用いたロシアとの協力の拡大に関心を持っています。簡単に説明しますと、これは、微小重力環境において、2000℃の高温に熱したときに、物質の性質がどのように変化するのかを観察することができる電子レンジのようなものです。これにより物質の新たな特性を発見する可能性が生まれるのです。ロシアは紫外線天文衛星スペクトルUFに活用するための日本の長寿命の固体撮像素子を手に入れることに関心を持っているでしょう。しかし、ロシアの宇宙計画は、米国からの制裁の対象となっています。米国は、宇宙分野での国際協力を禁止してはいませんが、ハイテクの譲渡に関しては制裁がかかっています」。

紫外線天文衛星スペクトルUFの開発も、JAXAとロスコスモスの共同事業のテーマの一つです。この天文衛星は、地上に設置された望遠鏡では観測することのできない紫外線スペクトルの領域を観測することを目的としたものである。この天文衛星は、星の形成、銀河の進化、ブラックホール、地球と地球外惑星の大気の研究を可能にするものである。JAXAとロシアの天文学研究所と宇宙科学研究所との間では、2021年に、「スペクトルUF」開発のための分光器を共同で製造するとの合意が結ばれている。
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ヴィタリー・エゴロフ氏は、続けて次のように述べている。

「ロシアは日本が2024年に予定している、火星の衛星フォボスの探査計画に参加するという可能性もあります。プロジェクトでは、フォボス表面の砂を採取し、地球に持ち帰ることが計画されています。これは、2011年にロスコスモスが試みた火星探査機『フォボス・グルント』が掲げていた課題ですが、このときの試みは、ソフトウェアの問題により、失敗に終わっていました。しかし、宇宙の土壌試料の研究は、2020年代の末に予定されているロスコスモスの『ルナ28』計画として継続されています」。

現時点では、ロゴジン社長の日本訪問におけるすべての議題は明らかにされていないが、JAXAモスクワ事務所長の和田理男氏は、2021年1月にロシア宇宙飛行士養成センターを訪問した際、宇宙における共同実験は成果を生んでいると述べ、両者は新たな研究の可能性について議論を進めていることを明らかにし、今後の協力に期待感を表した。
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