10月に任命されたばかりの古川禎久法務大臣は、12月21日、死刑制度について、国民世論の多数がやむを得ないと考えていると述べ、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑を廃止することは適当ではないとの見解を明らかにした。
さらに同じ日、木原誠二官房副長官も、死刑の是非について問われ、国民の多数が、極めて悪質な犯罪については死刑もやむを得ないと考えている点を指摘した。しかし同時に、死刑の廃止および死刑の無期懲役への移行は、司法のシステム全体に影響するものであることから、世論を考慮しつつ、慎重に検討すべき問題だと述べた。
2020年に発表された全国世論調査の結果を見ると、1,500人の回答者のおよそ80%が「死刑はやむを得ないものである」として、死刑を容認すると回答している。一方、国連は、2021年2月、世界のすべての国に対し、死刑を廃止するよう呼びかけた。
国連人権理事会の参加者らは、死刑によって犯罪を減少できるということを示す確固たる証拠はないとした上で、「死刑が適用されるとき、司法上の過ちや欠陥は不可逆的かつ修正不可能なものになってしまう」と指摘している。
一方、日本弁護士連合会は、死刑廃止を支持している。12月21日、日本弁護士連合会は法務大臣に対し、死刑制度を廃止し、死刑制度が廃止されるまでの間、すべての死刑の執行を停止するよう求めるメッセージを公表した。また日本弁護士連合会は、2021年7月に米国の司法長官が、連邦レベルでの死刑の執行を停止する指示を出したことで、世界的な死刑廃止の流れがさらに進んでいるとし、その上で、米国が死刑制度を廃止すれば、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国のうち、死刑を執行する国は日本のみとなるとも指摘した。
サンクトペテルブルクにあるヨーロッパ大学で社会学を教えるキリル・チタエフ教授は、死刑を廃止すべきであるするのには、少なくとも3つの論拠があるとの考えを示し、次のように述べている。
「死刑の執行というのは、不可逆的なものです。刑務所に収監されているだけであれば、裁判において何らかの間違いがあったと分かったとき、その人を釈放することができます。世界の歴史を見ても、過去、かなり多くの司法上の過ちがありました。その中には、性暴力やその他の凶悪犯罪に関するものも含まれています。しかし、死刑に処してしまった人を生き返らせることはできないのです。もう1つの論拠についてですが、死刑に対する恐怖が犯罪者を思いとどまらせるという考え方があります。この問題をめぐっては激しい議論が交わされています。これについては、そうした関連性が少なからずあることを示す研究結果もあれば、死刑と残忍な暴力犯罪の数の関連性はほぼないという研究結果も出ています。つまり、現段階では、そのような関係があることを示す決定的な証拠はないのです。もし死刑という刑罰を恐れることで犯罪件数が減少しているとしても、著しいものではありません」。
そして、チタエフ氏は、3つ目の論拠は、自らを文明的であると考える国家は、国民を殺してはならないという人道的原則だと指摘する。
「死刑の廃止は、より文明的な国家であるということを示すある種のシグナルのようなものです。これは国の経済にとっても、また国のステータス、ランキングにとっても重要なことです」。
アムネスティ・インターナショナルのデータによれば、2021年、国連に加盟あるいはオブザーバーとして参加する195カ国のうち、108カ国があらゆる犯罪に対する死刑の適用を完全に廃止している。27カ国は執行を停止、7カ国は一般的な犯罪に対する死刑を禁止しつつ、軍事犯罪などの特別な場合においては適用としている。そして、残る53カ国は依然、犯罪者への死刑宣告を続けている。