ロシアで注目され始めた老年医学
元気なら100歳でも手術
「ロシアは脳卒中など血管の病気が多く、高齢化は日本ほど深刻な問題ではありませんが、あと2~30年すると高齢者を包括的に診るという、日本的な医療を充実させないといけなくなるでしょう。今回はがんがテーマでしたが、私たちの感触だと60代とか70代は若い患者さんで、普段相手にしているのは70代後半以上の方たち。非常に複雑な病態を持った人が増えていますので、そういう状況にロシアも備えたほうが良いでしょう。老年医学はロシアでもこれからきわめて重要になると思います。35年前、私が医者になった当時は今のロシアのように、がん患者が70歳だと手術をするのはどうかな…という雰囲気がありましたが、今は、元気さえであれば手術の年齢制限がほぼなくなり、100歳でも手術をすることができる時代になりました。そこがロシアと大きく違う点です。」
日本がリードする老年医学分野の最新研究
「認知症については、早く見つけて早く介入できるように、血液検査で早期診断ができないかと研究しています。認知症を予防するための薬の開発も行われています。しかし、これから市場に出てくる薬は年間600万円かかってしまいます。それを全員に、というのは現実的ではありません。軽度認知障害(MCI)の段階で兆候を見つけ、いかに介入するかが課題です。」
高齢者医療保健分野でロシアと協力
「ロシア国民は、日本人が平均寿命の大幅な伸長をどのように達成したかに非常に興味を持っています。日本側と協力し、市民を対象にモスクワやサンクトペテルブルクで行った講座にはとても大きな反響がありました。そして今回のがんと老年医学の組み合わせも、ロシアの医師に非常に興味をもって受け入れられました。この分野での日本人専門家の経験は非常に貴重です。日本側は、長寿、超長寿、老化のメカニズムを長い間研究しており、非常に興味深いデータを持っています。一方で、私たちの経験も共有し、近年わが国で活発に発展している老年医学システムをご紹介していきます。日本の皆さんとは、経験や技術を共有し、今後も協力が続けられればと思います。」