日本政府は2022年度の防衛予算を閣議決定した。その額は5.4兆円で、過去最高水準に達した。今後、中期防衛力整備計画の一環で、2023年から2027年までの5年間で、防衛費は30兆円に達する可能性がある。
日本の防衛費は10年連続で増加しており、その最大の理由は、インド太平洋地域における中国と米国の対立激化と台湾海峡の緊張の高まりを背景とした、日本の安全保障を取り巻く問題である。中国の軍事力増強、北朝鮮によるミサイル発射、ロシア太平洋艦隊と中国海軍の艦船による日本海での合同海上演習に対して、日本は緊張感を抱いている。12月20日、自民党は日本の外交・防衛政策の基礎をなす「国家安全保障戦略」に含まれる複数の安全保障関連文書の改定に向けた議論を開始した。この議論に先立ち、岸田首相は、敵基地攻撃能力の保有を検討すべきだと発言した。
2022年の米国の国防予算は7682億ドルとなる。このうち、7400億ドルは国防総省の基本的なニーズ(新しい艦船や戦闘機の調達、兵器の近代化、新技術の開発、軍人の賃上げ等)に充てられ、約280億ドルが核防衛活動の費用としてエネルギー省に拠出される。この予算は、すでに議会の下院と上院で承認されており、米国大統領が署名すれば、国防権限法(NDAA)として法的効力を有するものになる。現在、防衛予算の規模では、米国が他を大きく引き離し、圧倒的にリードしている。
中国は現在、米国に次ぐ世界第2位の軍事予算を有しており、2021年は、前年比6.8%増の1兆3550億元(2090億ドル)に達した。中国の李克強首相が3月5日、全国人民代表大会でこのように述べた。2022年の軍事予算はまだ発表されていない。しかし、中国の軍事予算は過去10年間で85%増加し、習近平国家主席が2049年までに中国を世界有数の軍事大国にする目標を掲げていることを考慮すれば、2022年が例外になるとは考えられない。
ロシアの国防費は、議会下院のアンドレイ・カルタポロフ国防委員会会長によると、2022年は3.5兆ルーブル(約480億ドル)を超え、GDP予測値の2.6%に相当するという。予算の大部分は、新しい兵器や軍用・特殊装備の開発と調達、軍人や退役軍人の社会保障に充てられる。
軍事アナリストのウラジミル・プロフヴァチロフ氏は次のように考える。
「多額の防衛予算は、安全保障があらゆる国家の最優先事項の1つであることを示しています。一方で、各国は、自国を取り巻く地政学的な状況を考慮してそれぞれ判断しています。例えば、ロシアであれば、NATOが東方拡大し、その軍事構造がロシア国境に迫ることを懸念しています。日本は、中国の尖閣諸島沖での活動、北朝鮮の予測不可能なミサイル実験、インド太平洋地域の緊張を非常に懸念しています。一般的に、どこかの国が軍事力を強化すると、近隣諸国は裏があると考え、自国の軍を強化し、兵器の増強や近代化を始めます。防衛予算の拡大については、新しい兵器システムや第5世代の装備が登場したことが背景にあります。また、新兵器の製造コストは、材料費、電気代、輸送費、開発者や労働者の給与など、大幅に増加します。同時に、老朽化した装備の廃棄も必要ですが、これも一連の大事業であり、さらなる支出項目となります。自国の領土外に軍を展開すること、ましてや武力紛争への参加は、莫大な支出を伴います。このことは、例えば、米国がアフガニスタンへの軍事介入に20年間で2.3兆ドルを費やしたことが示しています。このほか、こんどはサイバースペースや宇宙で防衛能力を向上させることで、支出はさらに増加します。しかも、兵数が増えない場合でも、軍人の給料と維持費は増加するのです・・・」