クレンブテロールの犠牲になった選手
「オリンピックで選手たちは基本的にオリンピック村から離れてはいけないことになっています。しかも現在、世界はまだ新型コロナウイルスによるパンデミックが終息していない状況です。選手用として出される食事はすべて、国際オリンピック委員会との間で調整され、綿密にチェックされています。質の良くない食べ物をめぐる騒動など誰にも必要ないからです。トレーナーたちは選手に対し、それがいくら魅力的な場所であっても、指定された場所以外で食事をしないよう厳しく注意しています。コーヒーを飲むことなども禁止しています。ただし、例外があります。選手に対して、自分で食べ物を持ってくることが許されていることがあるのです。その場合は、選手とコーチ自身の責任になります。中国やソチで開かれた五輪でもそうであったように、ケータリングが認められたり、特定のレストランで食事をオーダーすることができることがあります。しかしいずれの場合においても、オリンピック村以外での食事というのは、リスクを伴うものです。食中毒を起こすかもしれないという危険性は、食べ物の質が悪いからという理由だけではなく、食べ慣れないものに対する反応としてもありえるからです。クレンブテロールやその他の禁止薬物は、一定の選手の間で人気があるバイオサプリに含まれていることがあります。WADAが禁止している薬物に対する陽性判定に対し、見直しを求めることはできますが、その調査には数ヶ月を要し、その間、選手が資格を剥奪されることもあります。しかも、クレンブテロールに陽性反応が出た選手が、偶然、摂取してしまったのか、肉製品やサプリに含まれていることを知っていて、故意に摂取したのかをはっきりさせることはできないのです」。
「リスクを冒さず、国際オリンピック委員会が認めた場所のみで食事をすることです。昨年の東京五輪でもそうでしたが、オリンピック村の食事は非常に多彩で、種類も多く、世界中の人々の好みを考慮したものになっています」。