岸田文雄首相は、3月2日に記者会見を開いた中で、ウクライナの人々との連帯をさらに示すため、日本政府は、日本に家族や知人のいるウクライナ人を受け入れる用意があると表明した。さらに岸田首相は、ウクライナへの支援はこれにとどまらず、「人道的観点から」対応していくと強調した。
これを受け、日本ではウクライナからの避難民受け入れを支援する動きが強まり、日本の複数の自治体がウクライナ避難民の受け入れを表明している。NHKが伝えるところによれば、2011年3月11日に発生した巨大津波で大きな被害を被った岩手県宮古市の山本正徳市長は次のように述べている。
「原因は何であれ、住み慣れたまちが壊されるという状況を見て、11年前の宮古のまちと重なり他人ごとではいられなかった。私たちは多くの皆様の支えがあったからこそ、前を向いて復興の歩みを進めることができた。今度は自分たちが、ウクライナの人たちの支えになることができたら、恩返しにもなると思っている」。
さらに、東京、大阪、熊本など国内各地の12の日本語学校や専門学校が立ち上げたウクライナ学生支援会は、ウクライナの学生たちを受け入れ、日本語学習を無料提供するというプロジェクトを始動した。ウクライナ支援会の平岡憲人代表は、「今後どれほど事態が長引くかわからない中で、日本に避難して生活するには多少なりとも日本語がわからないとなかなか難しい。後続の避難民を受け入れやすくするためにも、まずはウクライナ人のコミュニティのリーダーとなりうる若者を受け入れ、安心して日本で生活できる環境を一緒に整えたい」との考えを明らかにしている。
またNHKは、26の自治体に設置されているウクライナ避難民受け入れのための相談窓口の住所と電話番号を公表した。
3月18日、日本政府は、ウクライナ避難民の受け入れ拡大や生活支援などを検討する「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」を新設した。入国ビザの発給を短期間で行うため、申請手続きが大幅に簡略化されることが決まった。
このほか、対策連絡調整会議は、日本に親族などの身元保証人がいない人に対して宿泊先の提供や当面の生活支援を行うことを目的に、地元政府や企業、公共団体からの支援を受け付ける。
一方、日本政府のこうした措置に対し、難民支援を手がけるNGOは、日本は2019年に難民申請をした人のわずか0.4%しか認定しなかったとして、これは「下手なパフォーマンス」であるとして、政府を非難している。たとえば日本は、1981年から2020年の40年間に、3,550人難民認定あるいは人道配慮の在留特別許可を与えているが、この数は、フランスが2021年の24日間で与えたのと同数となっている。またウクライナからの避難民が260万人に達するなか、日本が受け入れたのはわずか29人である。2021年12月の時点で、日本に在住するウクライナ人の数は1,915人にすぎず、岸田首相が指摘するウクライナの避難民にとっての「家族や知人」の数もきわめて限られる。しかも、人権保護活動家らは、EU諸国は日本とは比べものにならないほど好条件でウクライナ避難民を受け入れようとしていると指摘している。
ウクライナに隣接する欧州諸国と異なり、日本はウクライナから遠く、旅費も高額で、輸送にも困難が生じる。しかも、スラヴ語は同族語であるため、外国語を話せない人でも、東欧諸国であれば、簡単ではないとはいえ、意思疎通を図ることができる。しかし、日本では、少なくとも英語を知らないだけでも、生活に更なる問題を引き起こしかねないのである。