3月7日、ロシア国防省は収集された大量のデータを元にした報告を行い、ウクライナ国内に米国防総省のプログラムで機能する30以上のバイオ研究所があるとした。またこうした研究所の活動は極秘とされていることから、この実験室で複数の危険な病原体を使った不法な実験が行われているのではないかと推測する根拠がある。そしてこの実験を発注したのは、米国防脅威削減局(DTRA)である。
3月10日、米国のアブリル・ヘインズ国家情報長官は、ウクライナ国内に生体防御に関する12のバイオ研究室があることを認めた。ヘインズ長官によれば、これらの研究所の活動の目的は、兵器開発ではなく、「安全の強化」だという。長官は、ウクライナも多くの国々と同様、複数のバイオ研究所を持っているが、それらは感染症のパンデミックや攻撃への防御を目的であり、生物兵器の研究所とは異なると説明した。
翌3月11日、国連安全保障理事会は、ロシアの要請を受けて緊急会合を開き、ウクライナにおける米国の生物兵器開発プログラムに関して協議を行った。ロシア国防省は、研究所では、生物兵器の製造を可能とするような危険な生物実験が行われていたとの確信を示した。しかし国連は、そのような証拠はないとして、ロシアの主張を否定した。会合で発言した中満泉・事務次長(軍縮担当上級代表)は、国連はウクライナにおけるいかなる生物兵器計画も把握していないと述べた。さらに、米国とその同盟国は、こうした動きを、ロシアが生物・化学兵器を使う口実づくりのためのものだと主張。またウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、ウクライナ国内で、化学兵器やその他の大量破壊兵器は開発されておらず、研究所はソ連時代から残されているもので、軍事技術ではなく、科学研究が行われているだけだと述べている。
ウクライナは、米国の出資によるバイオ研究所を持つ唯一の国ではない。公開されているデータによれば、過去20年の間に、こうした研究所の数はさまざまな国で400ヶ所に達している。またウクライナ国内で、米国が出資するバイオ研究所が発見されたというニュースは、韓国でも懸念を呼んでいる。先日、釜山では国内にあるすべての生物化学兵器研究所を閉鎖するよう求めるデモが行われた。今から数年前、釜山、龍山、平沢の米軍基地にバイオ研究所が作られており、さまざまな微生物株を使った実験を行われていることが分かった。この情報が明らかにされてから、メディアでは抗議の声が上がっていた。これに対し米国は、研究では死んだ株しか用いておらず、危険なものではないと述べたが、以来、米国が韓国で不法な軍事活動を行なっているのではないかという疑念は度々指摘されるようになっている。
第三国における米国の生物学研究所
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もちろん、国民の健康上の安全、生物学的プロセスに対する安全な条件に関わる問題は、どのような国にとってもきわめて重要なものである。一方、危険な病原体を使った学術研究は、生物兵器の製造の可能性を否定できるものではない。そこで、このような疑いを晴らすためには、こうした研究所に対する国際的な監視が必要であり、活動内容の透明性を確保し、社会への説明責任を果たさなければならないのである。