ウクライナでの露特別軍事作戦

鉄鋼価格高騰は、日本経済にどのような影響を与えるのか

日本経済新聞によると、日本では建設用鋼材の価格が約14年ぶりの高値を記録した。同紙は、ウクライナをめぐる情勢や対ロシア制裁によるサプライチェーンの混乱が影響していると指摘している。スプートニクは、この状況が日本経済にとってどれほど重大なのか、日本の鉄鋼業界の「財務の健全性」と「収益」にどのような影響を及ぼすのか調べた。
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長所:独立性

ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのコンスタンチン・コルネエフ上級研究員によると、昨今のトレンドとして、あらゆる経済問題をサプライチェーンの混乱のせいにする傾向が見られる。しかし、今のところ、日本経済では鉄鋼が「重大な状況」に陥る兆候はない。日本は鉄鋼を輸入に依存しておらず、鉄鋼業界で外部からの供給が途絶えても、十分に解決可能だとコルネエフ氏は指摘する。

「サプライチェーンの混乱とは、特定のサプライヤーが不可抗力により契約上の義務を果たせなくなることを意味します。そのため、新しいサプライヤーを探すのに時間とリソースがかかるという問題が発生するのです。しかし、鉄鋼に関しては、日本経済にとってまったく致命的問題ではありません。というもの、日本自身が世界最大の鉄鋼生産国だからです。つまり、自国の鉄鋼需要を十分に賄い、さらに輸出にまわす余力もあるのです。」

例えば、日本企業である日本製鉄は世界第3位の鉄鋼メーカー(第1位は多国籍企業アルセロール・ミッタル)である。[ic1] 日本製鉄は世界15カ国で事業を展開し、建設、自動車、エネルギー、資源、鉄道などの分野に鋼材を供給している。そのため、ロシアが日本にとって大きな鉄鋼供給国でないことはたしかだ。
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短所:エネルギー資源価格

日本の鉄鋼生産の自給率は高いものの、懸念材料がないわけではない。理由は、自前のエネルギー資源がないことである。また、日本には鉄鋼生産の原料がないため、これを主に輸入している。その例が、鉄鉱石である。鉄は鉄鉱石を溶かすことで作られる。
つまり、日本は鉄鉱石についても、エネルギー資源についても、決定的に輸入に依存しているのである。鉄鋼価格の高騰の最大の原因はまさにそこにある、とコルネエフ氏は言う。

「鉄の製造にはエネルギー資源が使われます。エネルギー資源の調達価格は見込みで決められるものであり、事前に設定されます。つまり、通常は価格上昇リスクを考慮して設定されるのです。しかし、現在のエネルギー価格をめぐる状況は、経済で「ブラックスワン」と呼ばれる、ショックに分類されるものです。ですから、国家予算は大きな歳出増を覚悟しています。あるいは、他の分野への予算配分の削減、社会保障費の削減までも考えているでしょう。つまり、高価格でのエネルギー資源調達と円滑な鉄鋼生産のために、資金の再配分が起こっているのです。加えて、市場では投機的需要が生まれるのが常です。トレーダーやブローカーは不安定な市況を利用して儲けようとするため、市場を加熱させることになります。」

日本の良質な鉄鋼が世界市場で競争力を失う可能性も否定できない。というのも、エネルギー価格の上昇に伴って、生産する鉄鋼の価格も上がることになるからだ。そのような状況になれば、日本は国内需要を賄うためだけでなく、他国への輸出のためにも、生産コストの安い国からの鉄鋼輸入を増やす可能性がある。
例えば、ロシアとウクライナは2020年の世界の鉄鋼輸出の約11%を占めていた。その割合が今後数年間でどうなるのか(下がるのか上がるのか)は、ウクライナ危機のエスカレーションがどれだけ早く収束するかにもかかっているのだ。
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