2017年の大統領選でも、決選投票に進んだのはマクロン氏とル・ペン氏で、今回はその再現となったが、2017年時の得票率は、マクロン氏が66%、ル・ペン氏が33%と、マクロン氏の支持率はル・ペン氏のほぼ2倍であった。今回の決選投票の結果が果たしてどのようなものになるのか予想するのは困難であるが、第1回投票で3位につけたジャン=リュック・メランション氏は支持者らに対し、決選投票で、ル・ペン氏に1票も入れないよう呼びかけている。またメランション氏以外にも、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏、フランス共産党のファビアン・ルーセル氏など、4人の候補者が、同様の呼びかけをおこなっている。
一方のマリーヌ・ル・ペン氏は、当初から、価格高騰による購買力の低下、失業率、エネルギー問題など、庶民がもっとも懸念を抱いている問題に注目し、訴えかけてきた。そして賃金と年金の引き上げ、若者への特恵制度、石油企業への超過利潤税など、社会分野での多くの公約を掲げている。また、ル・ペン氏はウクライナでのロシアの行動を非難しているものの、EUの対露制裁については、非生産的なものであり、フランスひいては欧州全体に損失を与えるものだとして、反対の立場を示している。
この2人の対決について、高等経済学院欧州・国際研究複合センターのドミトリー・ススロフ副所長は、国民はマクロン大統領の政策に不満を持っているものの、ル・ペン氏が当選する確率は低いと指摘する。
「フランス人は何より、国内の経済状況に不満を抱いています。フランスにおける対露制裁の影響で、欧州のその他の国々同様、主にガソリン、電力、食料品などの価格が高騰しています。これにより、生活レベルが低下しています。そしてこうした生活の悪化について、多くのフランス人の目には、最近、マクロン大統領が外交政策に多くの注意を割いているのが原因であるように映っています。しかし、わたしの考えでは、ル・ペン氏が当選する確率は低いでしょう。というのも、決選投票を前に、フランスのメディア、世論先導者、ビジネス界、政治界のエリートらが、有権者に対し、マクロン氏に投票するよう呼びかけるだけでなく、ル・ペン氏に投票しないよう促しているからです。また第1回目の投票で敗れた左派、中道派の候補者も、決選投票でル・ペン氏には投票せず、マクロン氏に票を投じるという姿勢を一貫しています。つまり、ル・ペン氏に投票するのは、彼女を一貫して支持してきた有権者(労働者、公務員)と極右支持者だけとなり、これだけでは勝利するのに十分な数とは言え無いのです」。
一方、マクロン氏自身は決選投票の結果について、それほど楽観視していない。集会で、マクロン氏は、ゲームはまだ終わっていないとして、最後の戦いが予想外の展開となる可能性があると述べた。またマクロン氏は、政治上のサプライズが起こる可能性も除外できないとし、投票の結果が予期していたこととまったく異なるものとなった例として英国で行われた欧州連合離脱の是非を問う国民投票を挙げ、不可能というものなど何一つないと締めくくった。