ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏の運命が再び危機に

ロンドンのウェストミンスター治安裁判所は、ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ氏をアメリカ当局に引き渡すことを決定した。この決定により、イギリスで3年間拘留されているアサンジ氏をめぐる訴訟は転機を迎える可能性がある。これまで弁護側は、外交や軍事の機密文書を公開したとしてアサンジ氏を訴追しようとするアメリカからの身柄引き渡し要求をうまくかわしてきたが、今回はどうやら悲しい結末に向かっているようだ。最終的な決定は、ほぼ形式的なものとはいえ、イギリスのプリティ・パテル内相にゆだねられている。アサンジ氏の弁護側は5月18日までに上訴できる。
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2021年1月、同裁判所は、アサンジ氏の精神的健康を危惧し、引き渡せば自殺する可能性があるとして、アメリカ司法省への身柄引き渡しを認めないと判断した。しかし、2021年12月、高等法院は、被告の処遇に関する懸念を払拭できる保護措置が準備されていることを理由に、身柄引き渡しを認める判断を下した。アメリカは、アサンジ氏を最も厳重な刑務所に収監することは求めず、有罪が確定した場合、母国オーストラリアでの服役を認めるとしている。
国際人権団体は、アサンジ氏の身柄引き渡しは言論の自由と人権への打撃になるとして、抗議している。アムネスティ・インターナショナルは、身柄引き渡しが実施された場合、イギリスは人権の尊重とこの分野での国際公約を公然と無視することになると述べ、アメリカに対してもアサンジ氏の訴追を断念するよう呼びかけている。
世界最古の民主主義国家を自負するイギリスが、アメリカにとって極めて不都合な文書を暴露したジャーナリストの身柄を引き渡さなければならないのはなぜか? スプートニクは、国際人道政治研究所の専門家のウラジミール・ブルテル氏に尋ねた。
「このタイミングが選択されたのは明らかに偶然ではないでしょう。今、世界のメディアの注意はウクライナ問題に向いており、アサンジ氏の身柄引き渡し問題が世界の注目を浴びることはないと思います。なぜイギリスがこのような行動をとったのか。それは、アメリカからの圧力があったのだと思います。判決を下したポール・ゴールドスプリング裁判官が選択の余地はなかったと語っているのが、それを示しています。裁判官は、誰が選択の余地を残さなかったのかは明言しませんでしたが、結論は明らかです。アメリカ当局は、イギリスとの特別な関係を利用して、自分たちの主張を押し通すことに成功したのです。
ウィキリークス創始者アサンジ被告、収監中の英国刑務所で脳卒中
もしアサンジ氏がアメリカ国民であり、宣誓をしていたなら、売国奴と捉えられても仕方ないかもしれません。しかし、アサンジ氏は独立系のジャーナリストです。彼は、第一に、アメリカの言うことは時に真実ではないこと、第二に、アメリカは自国の法律を破り、他国の法律を軽視していること、このふたつを公にしようとするジャーナリストです。アメリカがアサンジ氏を祖国に送り返すとは思えませんが、今後の展開を待ちましょう・・・彼の弁護側にはまだイギリスの高等法院に上訴するチャンスがあります。理論的には、欧州人権裁判所に提訴するチャンスも残されています。」
ジャーナリストのジュリアン・アサンジ氏は、2006年、ウィキリークスのサイト上に米軍活動に関する機密文書の公開が始ったことで一躍有名になった。ウィキリークスは2010年以降、アメリカの軍事と外交に関する文書を25万件公開している。2010年にスウェーデンでセクシャルハラスメントとレイプの罪で告発されたアサンジ氏は、2012年6月からロンドンのエクアドル大使館に身を隠していた。彼は、この事件は政治的な意図によるものだと語り、罪を認めなかった。2019年4月、エクアドル当局はイギリス警察によるアサンジ氏の拘束を許可。同年5月、イギリスの裁判所は、アサンジ氏が2012年に裁判所に出頭しなかったとして、50週の禁固刑を言い渡した。刑期満了後も、アメリカへの身柄引き渡し問題が解決するまで、収監が続いている。
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