検閲か常識か?日本のありふれた広告が国連を憤慨させた理由

日本経済新聞が、朝刊で、漫画「月曜日のたわわ」の単行本最新刊の全面広告を掲載するにあたり、性的に描かれた女子高生を使用したことについて、「国連ウィメン(国連女性機関)」本部が抗議を申し入れた。一方、これに対し、日本人の一部は国連の機関が国の内政に介入したことに憤慨している。なぜこのごく普通の広告がジェンダー平等を訴える人々の怒りを買ったのだろうか。「スプートニク」が取材した。
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国連の抗議の理由
「国連ウィメン」は11日、日経新聞社に対し、「容認できない」と抗議する書面を送付した。ハフポスト日本版によれば、「国連ウィメン」は対外的な公式説明や、広告の掲載の可否を決めるプロセスの見直しなどを求めた。
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この全面広告には、現実にはありえないような大きな胸を強調した制服姿の女子高生が描かれている。国連ウィメンは、日経新聞は、「国連ウィメン」が中心となり、メディアと広告によって国際的にジェンダー平等を推進する取り組み「アンステレオタイプアライアンス」の日本支部創設メンバーであることから、今回のような広告の掲載はそうした姿勢と矛盾したものだと指摘している。アライアンスは、社会における有害なステレオタイプを根絶し、企業広告によって状況をより良いものに変えていくことを目的としている。
一方、これに対して日経新聞は、「社内で色々な人の意見を聞いた上で、この広告を問題だと認識しなかった」と回答している。
米国在住の国際弁護士、湯浅卓氏は、このような抗議は国際機関側からの意義ある一歩であり、真剣に受け止めてもらいたいと述べ、さらに次のようにコメントしている。「記事の中の国連女性機関が『失望しており・・・、立場について考え直してほしい』と書面に記した点は、米社会の常識では、国際機関側の非常に強い要請を意味します。記事で、抗議文送付前に、日本側から『社内で色々な人の目を通して検討したが、広告を問題だと認識しなかった』と説明された点は当該会社のコンプライアンスが米国だと論点になり得て、仮にコンプライアンス論点にまで波及すると、現場担当者でなく、アメリカ法だと、いきなり経営陣所轄事項になり得る可能性があるのが、コンプライアンスをめぐる法理です。記事だと、相手がアメリカ組織ではなく、日本での広告となると、仮にこじれても、当該仕事担当現場対国際組織の話で済む可能性もひょっとすると有り得ますが、国際機関には表現の自由に触れていない論理的な強みがあり、日本側も人権と国際的な経済ビジョンにおいて経験値を持つ方々が多いので交渉経済を潤滑化する対応がベストと思います」。
セクシュアリゼーションに対する抗議とステレオタイプとの戦い
一方、「国連ウィメン」日本事務所の石川雅恵所長は、なぜこの広告が「アンステレオタイプアライアンス」の条項に違反しているのかについて次のように説明している。
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「今回の広告は、男性にとっての『女子高生にこうしてほしい』という見方しか反映しておらず、女子高生には『性的な魅力で男性を応援する』という人格しか与えられていません。私たちが重視してきた『3つのP』の原則は守られていないのです」、「明らかに未成年の女性を男性の性的な対象として描いた漫画の広告を掲載することで、女性にこうした役割を押し付けるステレオタイプの助長につながる危険があります」。
日本では、このような広告というものを自分たちの生活の中にある「当たり前のもの」と感じている人もいる。しかし、今回のような場合、「外の世界の人たち」の視点というものが、変化のためのきっかけになる可能性がある。国際的なスタンダードは、広告をより良いものにし、ジェンダー平等を含め、ステレオタイプ払拭することを目的としている。石川所長はこれについて次のように述べている。
「大切なことは、身の回りの『当たり前』に疑問を持ち、諦めないで声を上げていくこと。そして、(間違えた側は)『外の世界の人たちの声』に耳を傾けること。日経新聞に対しても「方向性を間違えたと認識するのであれば、軌道修正に向けて一緒に頑張ろう」。
日本社会は変化を求めていない?
しかし、日本国内では多くの人々が、石川氏の考えには同意しておらず、国連の抗議は内政干渉であり検閲だと指摘している。
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漫画「ラブひな」の作者である漫画家の赤松健氏は、この「国際ウィメン」からの抗議を厳しく非難し、「国連ウィメン」の抗議に関する記事を引用しながら、「わたしはこの抗議は典型的な『外圧』であって、表現の自由を守るために徹底的に反対しなくてはならないものと考えています」と書いている。
また赤松氏は、「国連ウィメン」の活動を批判し、「石川所長は記事の中で、今回の抗議は、規約違反への異議申し立てに過ぎず、『国連機関が一般の全ての民間企業の言動を監視し、制限するわけではありません』と言っています」と指摘。石川氏に対し、自身の言葉に対する学術的な根拠を示すべきだと主張し、さらに次のように書いている。
「なぜ創作物及びその広告が、ステレオタイプの強化につながり、性的搾取を奨励することになるのでしょうか。創作物の内容が何であれ、その内容やその創作物の中で起きていることを、それを読んだ人間が起こしてしまう危険があれば、我々創作者は何も書く/描くことはできません。現実で、マンガが戦争を助長したとか、殺人を奨励したなんて話は聞いたことがありません。なぜ、女子高生を描いたマンガに限っては、こんな不合理な規制の根拠を高らかに主張されるのか。合理的な理由や科学的な根拠を示してほしいと思います」。
一方、陸上の世界選手権大会で、400メートルハードルで銅メダルを獲得し、現在はスポーツコメンテーターとして活躍している為末大氏も、赤松氏の考えを支持している。為末氏は、自らのツイッターで、「多様性の議論は必ず『どの程度不快を許容できるのか』に到達します」、「何を持って不快とするかは文化圏で違い、人権侵害などはまだしも国連が基準を持ち込むべきではないと思います」と呟いている。
この問題をめぐる議論はすでに長く続いているが、どちらの考えにより多くの人が賛同しているのかははっきりとしない。男性たちは、こうした女性のイメージを保護しているが、女性の声はあまり聞こえてこないのは興味深いところである。
さらにWHO(世界保健機関)と「国連ウィメン」が共同で行った調査によれば、肉体的な暴力または性暴力を一度でも受けたことがあるという女性は全体の3分の1となっている。暴力を受けた女性の中には、かなり低年齢の少女も含まれている。報告書のデータによれば、交際相手のいる15歳から19歳までの少女のほぼ4分の1が、パートナーから暴力または性暴力を受けたことがあるという。この年齢はちょうど健康的な関係というものがどのようなものなのかというイメージが作り上げられるときである。
人権活動家と国家の協力、女性に対する見方を変化させることによって、近い将来、このような数字が引き下げられることを願わずにはいられない。
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