岸田首相が海外歴訪を終了、その成果とは?

5月6日、岸田文雄首相が東南アジアと欧州の歴訪の全日程を終えた。岸田首相は、インドネシア、ベトナム、タイ、そしてイタリア、英国を訪問したが、これは6月にドイツで予定されているG7(主要7カ国)首脳会議を前にした一連の2国間協議の一部となるものである。訪問は公式的なものではなく、協議されるテーマや結ばれる合意の内容は国によって異なるが、すべての国に共通したテーマとなったのは、自由で開かれたインド太平洋地域の実現に向けた協力とウクライナ情勢を背景とした安全保障分野での協力の強化である。
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2022年11月、インドネシアとタイは重要なサミットの会場となる。11月15日から16日にかけて、インドネシアはG20(主要20カ国・地域)首脳会議を開催、また11月18日から19日にかけては、タイはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットを開催する。つまり、岸田首相がこの国を訪問先に選んだのは偶然ではない。
今回、岸田首相が最初に訪問したのはインドネシアで、首相はサミットの開催を成功させるために最大限の支援を行うと約束した。日本とインドネシアは2023年に祝われる外交関係開設65周年を前に、戦略的パートナーシップを強化し、自動車製造、燃料エネルギー、都市高速鉄道、スマートシティ、離島開発などの分野における協力を継続していく意向を確認した。離島開発分野において、日本は巡視船の供与を予定している。
岸田首相が訪問したアジア3カ国での首脳会談における政治分野のテーマは、ほぼ同じであった。首相は、各国は、ウクライナ、東シナ海、南シナ海、北朝鮮の情勢を含めた多くの脅威に直面していると述べた上で、法が支配する自由で開かれた国際秩序を維持、強化することが重要だと強調した。インドネシアとタイは、日本と同様、3月2日にウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦を非難する国連総会決議を支持し、両国指導者は武力の行使や脅威を用いて、国家主権や領土保全の破壊を許してはならないとの立場を表し、ロシアとウクライナの紛争を早急に平和的手段で解決するよう呼びかけた。
日本がタイと締結の「防衛装備品・技術移転協定」 東南アジア諸国での影響力拡大手段か 露専門家の見解
一方、この対ロシア決議案に対する投票を棄権したベトナムでの首脳会談で、岸田首相は、伝統的にロシアと緊密な関係を持っているベトナムがウクライナへの人道支援を一番に発表した点を指摘し、これを「前向きな一歩」であると評価した。また岸田首相は、ロシアとの関係を含め、さまざまな理由からウクライナでの状況に対し、G7と同じ対応をしていない国は相当数存在するとも強調し、このような国からできるだけ理解と協力を得るよう努めることが重要だとした。ベトナムのグェン・スアン・フック国家主席との会談では、国際社会、アジア太平洋地域における行動を緊密に調整し、地域の安全保障問題を解決し、地域の関係を強化していく意向が確認された。両首脳はまた、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の枠内での協力、脱炭素社会への移行、サプライチェーンの多元化、デジタルトランスフォーメーション、技術革新、衛星からのモニタリングを使用した防災能力の向上などに向けた協力についても協議した。このほか、岸田首相は、日本は防衛分野、とりわけベトナム軍へのサイバー分野の能力構築支援、海上保安能力向上のための協力を一層推進していくと言明した。
日本とベトナムの首脳会談 ウクライナ紛争の即時停戦と人道支援で一致
これより前の4月19日、ベトナムとロシアは、複雑な状況における軍事的課題を遂行する際の非標準的な作戦を策定する合同軍事演習を実施することで合意した。
タイでの首脳会談で大きな成果となったのは、日本からの防衛装備品の輸出などに関する協定を締結することで合意がなされたことである。これは安全保障分野における協力の強化を目的としたものであり、また今年2022年に迎える日タイ修好135年に合わせたものでもある。日本はすでにインドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピンとの間でも同様の合意を結んでいる。具体的な内容と合意の実現に向けた詳細は、11月に開催される特別閣僚会議で話し合われることになる。さらに両国は、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議成功に向けた緊密な連携を申し合わせたほか、国連安保理改革や核軍縮・不拡散の問題でも協力していくことで一致した。
イタリアでの首脳会談では、G7を含む国際社会はウクライナ危機に毅然と対応するべきだとの考えが確認された。また両首脳は、世界のエネルギー供給問題、世界経済の停滞、新型コロナウイルスの影響などについても意見を交わした。また両首脳は、自由で開かれたインド・太平洋地域の実現に向けた協力を継続していくことで一致したほか、11月4日に北朝鮮が行った日本海に向けた弾道ミサイルの発射を含む、核・ミサイル問題など、北朝鮮問題の解決でも協力するとした。
次に、ローマ教皇フランシスコとの会談では「核なき世界」の実現に向けた協力が確認された。広島の選挙区から選出された岸田首相にとって、この問題は特別な意義を持つものとなっている。
そして英国で両首相は、予想に反せず、共通の立場を確認した。外務大臣時代にも会談を実施している2人は、欧大西洋地域とインド太平洋地域の安全は切り離せないものであり、国際問題の解決に向けた英国と日本のアプローチは、多くの部分で一致しているとの認識を改めて確認した。
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