これは、最近行われたバイデン米大統領の日本訪問のときのような発言を指している。米大統領府は、のちにバイデン大統領は、そうした明らかな言い間違い(サラミ・スライスの原則に沿って)が台湾をめぐる熱い紛争をより現実的なものにするということを正しく理解していなかったと説明した。
こうした情勢の発展への最初の一歩となったのは、突然、大国である中国との「関係悪化を引き起こした」欧州の小国リトアニアの外交措置である。リトアニア政府は、ヴィリニュスにある台湾の代表機関を、「台北」ではなく、「台湾」と表記したのである。これを受けて、中国はリトアニアとの外交関係を格下げし、多国籍企業に対し、リトアニアとの関係を断絶するよう求めた。
これについて、軍事雑誌「スヴェズダー」のアナリスト、アレクセイ・レオンコフ氏は次のように述べている。
「これは実際に小さな出来事です。というのも、一見、これを世界における中国の地域に対する深刻な脅威とみなすことはできないからです。しかし、総じて、こうしたすべての小さな「サラミ・スライス」が、希望したような結果につながるのです。そして台湾をめぐる不安定化が、地域における劇的な変化をもたらす可能性があるのです」
そこで、4月に、米上院のロバート・メネンデス外交委員長(民主党)を含めた米議員団が台湾を訪れたのも偶然でないのは明白である。ロイター通信によれば、メネンデス委員長は、以前、米首都ワシントンにある台湾の事実上の中米大使館となる「台北中米経済文化代表処(TECRO)」の名称を「台湾代表処」に変更するための法案を作成した人物である。もしホワイトハウスがこのような決定を下せば、中国はこのような措置を黙認することはないだろう。
つまり、米議員らのこうしたすべての「小さな一歩」は偶然起こったものではなく、米国と中国の危険なゲームを如実に物語るものである。米国は中国が断固とした行動に出る用意があるかどうかを確認しているのである。しかし、米国は、米国の行動がどの局面で中国にとって完全に受け入れ不可能なものとなり、その後、どうなるのかについて正しく評価することはできるのだろうか。なぜなら中国は台湾の地位というのは米中関係においてもっとも繊細な問題であるとし、台湾統一を保障するための武力行使を否定したこともないのである。
一方で、冷戦時代、ソ連は、東欧諸国で親ソ連的な共産主義勢力を少しずつ政権に就かせるために「サラミ・スライス戦略」をうまく利用したというのは興味深いところである。そしてこの政治的戦略は、短期的に見れば、効果的に目的を達成したが、長期的(目まぐるしく状況が変化する中)には破綻し、ソ連のシステムによる重い政治的結果をもたらした。
しかし、米国はどうやら過ちを犯さないように計算していると見られる。ただし、歴史の行方というのは往々にして予測不可能なものである。それはサラミのように有名なものを含め、あらゆる料理の味と同様である。そして結局のところ、それが中国の「好みの味」でないのは明らかである。