「それが今も存在するということに、心の底から驚いた」
多くのティーンエイジャーと同じく、ソフィヤさんは中学生のときアニメに夢中になり、実際の歴史的人物を描いた「薄桜鬼」が特に好きになった。そこで、芸者というものを初めて知ることになったという。
「まだそのようなものが存在するのだと知って本当に驚きました。芸者は今から100年前、200年前と同じように生活し、同じように踊っているのです。それで、わたしもこの文化に触れてみようと思い、日本舞踊を始めました」
ソフィヤさんは、日本で続けようと思っている専門の勉強以外に(北海道大学の日本史学部への入学はパンデミックにより延期することになった)、自分の好きなテーマの本を見つけられるだけ読んでいる。お気に入りのテーマは、江戸時代、芸者、衣服の歴史、日本舞踊などで、読んだ本から得た興味深い事実をTikTokで紹介している。
ソフィヤさんは、ユーザーが何より興味をもつのは、日本語や歴史上の人物の人生におけるスキャンダラスで刺激的な事実、たとえば侍たちの同性愛、あるいは水揚げの儀式といった、何か予想に反するものだと指摘する。
ソフィヤさん
10枚の着物、8本の帯、3度の訪日の試み
ソフィヤさんは数年かけて10枚の着物と8本の帯を集め、それらはドレッサーいっぱいに詰められている。ソフィヤさんは、日本文化に関する特別なイベントの時だけでなく、散歩や何か用事で出かけるときにも着物を着ているという。
ソフィヤさん曰く、着物はロシアの気候に驚くほどぴったり合う衣類なのだそうだ。涼しいペテルブルクの天候は着物を着るのにぴったりで、雨が降っても障害にはならないという。そのようなときのために、弾く生地でできた雨用の道行があるからだ。この伝統的な着物には、黒塗りの下駄かグレーの草履を履く。しかし、天候によっては、コーディネートで実験的なことをしなければならないこともある。とりわけ、寒い日には、ソフィヤさんは着物にブーツを履き、冬には長いスカートを履いてダウンコートを着る。
ソフィヤさん
ソフィヤさんは、周囲の人々は、彼女のイメージを興味と好奇心を持って見てくれていると話し、そういった人々は彼女と知り合いになろうとしたり、写真と撮ろうと近づいて来るという。唯一彼女がこれまでに直面したネガティブな経験は、文化を借用しているとして非難されたことだそうだ。
ソフィヤさんが持っている着物は10枚ほど。その中でもっとも高価なものは、専門店で買った3万円ほどのもので、一番安かったのは、成田市にあるアンティーク洋品店で見つけた1000円の掘り出し物なのだとか。
パンデミックにより、ソフィヤさんは日本の大学入学を延期しなければならなくなったが、今回の入国の試みは3回目で、次こそは成功するよう祈るばかりだという。
「わたしはもう何年間も、自分で情報を集めていますが、これでは足りないと感じています。ひょっとすると、重要なことを自分自身で見つけることができるほど十分な経験がなく、情報も十分に集められていないのかもしれません」
ソフィヤさんは、彼女の目的は日本の文化を外国に広めることだと述べている。なぜなら、彼女は、複雑なことを、簡単な言葉に置き換えて話すのが好きだからだという。そうやって、フォロワーたちの興味も作られているのである。
「わかってくれるまで待つ気はない」
「着物は舞踊よりも温かい反応が得られます。ダンスは多くの人にあまり理解されず、音楽も多くの人には好まれません。それで文化の借用だと言って非難されるのです。わたしがTikTokで舞踊を公開するようになったとき、自分を理解してもらえるとは思っていませんでした。ヨーロッパのユーザーたちは、大体、映画「SAYURI」を見ていて、「日本舞踊」とは何の関係もない伝統的な舞踊のイメージというものを持っています」
ロシア語での情報はなかったが、ソフィヤさんは動画を使って勉強するようになったという。現在、ソフィヤさんは祇園小唄、6段崩し、黒髪を覚えたとのこと。日本の舞踊家の元で舞踊の勉強をするというのが、日本に長期滞在するというソフィヤさんの大きな夢の理由の一つなのである。
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