ニトリルは窒素を含む有機化合物の一種で、DNAやRNAなど複雑な分子の合成を活性化すると考えられている。そのためニトリルがあるということは、生命の起源につながる化学プロセスを引き起こした可能性がある。
スペイン、日本、チリ、イタリア、米国の天文学者からなる研究チームは、スペインにある電波望遠鏡で分子雲「G+0.693-0.027」の観測を行った。分子雲とは、星間分子雲とも呼ばれ、主に水素分子からなる星間ガス雲のこと。この分子雲の直径は約3光年、温度は3000ケルビン(約2730度)、質量は太陽の1000倍。
研究チームは今回、分子雲 「G+0.693-0.027」において、シアン酸 (HOCN) と 3 種類の C4H3N 異性体 (シアノアレンCH2CCN、プロパルギルシアン HCCCH2CN、シアノプロピン CH3CCCN) とシアノホルムアルデヒド (HCOCN) およびグリコニトリル (HOCH2CN) の痕跡を検出した。
ニトリルは加水分解されればアミド、カルボン酸に、還元すればアルデヒドやアミンに変換できるカルボン酸誘導体。グリコロニトリルとシアノアセトアルデヒドは、DNAやRNAの一部であるアデニンやシトシンなど、生命誕生において重要な役割を担っている。研究者らは、「G+0.693-0.027」でニトリルが豊富に見つかったということは、生命の起源につながる物質が宇宙で合成できることを裏付けるものだと指摘している。
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