今回、わたしはドンバスでの出来事の成り行きを、ロシアによる特別軍事作戦の実施を背景に、以前とは違った条件で目にすることになった。2018年にドンバスを訪れたとき、ウクライナ国民の30%を占めるロシア語話者たちは、ロシア軍が来るのを心待ちにしていると包み隠さず話していたが、彼らの望みがついに叶えられたのである。ただし、米国が支援したマイダン革命以降の8年の間にウクライナ軍に植え付けられた超愛国的、ネオナチ的な要素に対抗するための高い代償を払うことにはなったのだが。
わたしたちは、ロシア国防省が組織したプレスツアーで、多くの国際的なジャーナリストのグループとともにドンバス入りした。
ここで強調しておかねばならないことは、ロシア、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国は、西側からの厳しい検閲と制裁を背景に、作戦の実施場所の状況を伝えるために西側のジャーナリストを招待したということである。ロシアのメディアが、ドイツ、フランス、オランダなどの欧州諸国で禁止されている中、ドイツのディー・ツァイト、フランスのフィガロなどの新聞社の記者らも、今回のプレス・ツアーへの参加申請をおこなった。
「わたしにとって、ウクライナはもう死んだ」
一方、統制下にある地域での生活の正常化に向けたドネツクおよびルガンスク人民共和国の人民警察の尽力は、個別に指摘するに値する。
しかも、彼らはロシア軍と共同で、地域での攻撃を続けている。
3週間前、ロシア軍部隊とルガンスク人民共和国の人民警察は、セヴェロドネツクを制圧した。
厳しい安全措置を遵守しつつ、わたしたちはこの小さな都市までたどり着くことができた。
© Sputnik / Ceyda Karan
被害の規模はかなり甚大であった。ウクライナの民族主義者たちが、住宅に米国の対戦車ロケット兵器NLAWや対戦車ミサイル「ジャヴェリン」やフランスの「ミラン」などを配備することで作られた「防衛線」上にあった建物や商店、公園、橋は破壊されていた。
セヴェロドネツクの住民たちは、わたしたちに、ウクライナの超愛国主義者らの戦法について話してくれた。ある女性の話によれば、「愛国主義者らは、自分たちを神だと思っており、ロシア系住民をボロきれのように扱った」という。
「この悲劇の後、わたしにとって、ウクライナはもう存在しません。わたしにとって、ウクライナはもう死んでしまったも同然です。残ったのはロシア人だけです」
また彼女は、ロシア軍とルガンスク人民警察が来てから、生活が少しずつ整いはじめたと強調する。
「今はもうどこにいても安全です。もちろん、問題はありますが、あらゆる形で援助してくれています。電気はありませんが、発電機が運ばれてきて、電気を供給してくれています。食料品や水も配られています。モバイル通信も機能しており、医療サービスは良質で、診療所も病院も開いています。医療は無料で、何も支払う必要はありません」
リシチャンスクのNATO博物館
セヴェロドネツクから10キロほど離れた場所にあり、1週間前にロシアとルガンスク人民共和国の同盟軍によって制圧されたリシチャンスクの状況はさらに良いものとなっている。
というのも、その大きな理由は、ウクライナの愛国主義者らが、セヴェロドネツクでの激しい戦闘の後、もう持ち堪えることができないということを理解し、リシチャンスクから退却したことである。同盟軍は、地元住民らに人道支援を送り続け、地雷除去作業を行なっている。リシチャンスクの中心にある通りの一つには、戦利品であるウクライナ軍や愛国主義的連隊の兵器や武器が展示されている。これは事実上、屋外の「NATOの兵器博物館」である。
ここでは、ウクライナがNATOから供与を受けた戦車、装甲兵員輸送車、ミサイル発射装置を目にすることができる。そのすべては良好な状態となっており、ロシア軍とその同盟国であるルガンスクおよびドネツク人民共和国の軍によって使用されることになるのである。
一方こうした中、ウクライナ軍はNATO加盟国から入手したミサイル複合施設から、ドンバスに向けて大々的な攻撃を続けている。とくに、夜中になると、砲撃の音は非常によく聞こえる。
ルガンスクの新しい病院
ルガンスクの生活条件は非常に困難ではあるものの、都市部のインフラ整備に対する投資は少しずつその規模を拡大している。3週間前に基礎工事が行われた新たな病院の建設も早いテンポで進んでいる。新型コロナウイルスによるパンデミック中に考案され、ロシアの協力の下で実現されたこのプロジェクトは、200の病床をもつ、地域ではじめての多機能型病院となる。病院の建設作業を視察したルガンスク人民共和国のレオニード・パセチニク首長は、これまで共和国には多機能型病院はなかったとした上で、病院は短期間で完成し、稼働を開始することになると明らかにした。
マリウポリでも普通の生活が取り戻されつつある
セヴェロドネツクやリシチャンスクでは、日常を取り戻す動きはまだ始まったばかりであるが、マリウポリでは、すでに、都市のインフラ復興に向けた作業が精力的に行われている。建物が破壊された場所では、新たな建設作業が行われている。また家を失った人々に対しては、5階建てのアパートの部屋が無料で提供されている。このプロジェクトの開始は6月に宣言され、その実現に向けた事業はロシア国防省が管轄している。
マリウポリで行われている新たな住宅の建設プロジェクトを統括するオレグ・ペチョンキン氏は、合わせて1011棟の住宅が建設され、9000人以上に提供されると明らかにした。また、これ以外にも、同じような社会施設の建設に向けた商業的、非商業的プロジェクトがさらに12あるという。計画では、2022年の10月から11月には実現されることになっている。ロシア国防省はさらに、マリウポリ初となる多機能型病院(60床)の建設を行なっており、作業は9月から10月には完了すると見られている。
しかも、このプロジェクトは、地元住民とロシア市民、125人に雇用を提供するものとなる。
地域での地雷除去作業
ロシアの支援の下で行われるドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国における情勢の正常化に向けた作業でもっとも危険なものが、ウクライナ軍が設置した地雷の発見と除去である。
現地では、1日におよそ400の地雷が無害化されている。わたしたちは、ロボット「ウラン6」を使用した地雷除去システムの作業の様子を視察することができた。地雷無害化装置の作動中に起こった爆発では、わたしたちは文字通り、倒れこむこととなった。
この作業について、地雷除去国際センター、地雷除去部隊のアレクサンドル・グロモフ司令官は、すべての地雷が完全に取り除かれるまで継続されることになると言明している。