ラシュディ氏はインド出身の元イスラム教徒で、現在は無神論者。1988年に発表されたムハンマドの一生を描いた作品「悪魔の詩」は、イスラム教を冒涜するものだとしてイスラム世界で激しい反発を招いた。イランの最高指導者ホメイニ師(当時)はラシュディ氏に対して「死刑」を宣告し、長年にわたり命を狙われていた。また、日本を含む世界各国で翻訳・出版関係者が暗殺される事件が起こった。
ラシュディ氏は12日、訪問先の米ニューヨークで、講演のために設けられた壇上に上がった際に襲われた。刃物で10回から15回にわたって切りつけられ、集中治療室で治療を受けているが、片目を失明する可能性があるという。
「Indian Express」などによると、事件で米警察当局はハディ・マタラ容疑者(24)を逮捕。国籍や犯罪歴の有無を調べている。マタラ容疑者のSNSからはイスラム教シーア派の過激派のシンパで、イスラム革命防衛隊の目的に共感していたとみられる投稿が見つかったという。
一方、「Daily Mail」によると、イランの一部メディアは事件を肯定的に受け止めている。あるイランメディアは事件を「背教者」への攻撃と位置づけ、マタラ容疑者を「勇ましく、本分をわきまえた人物」と称賛している。
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