バラノフスキー氏によると、SMCの新拠点は4階建てで延べ面積は14900平方メートル。現地法人の本社が入るほか、生産技術センター、物流拠点としても利用される。この拠点では末端消費者向けの製品を配送するだけでなく、より複雑な特注の製品の生産も行われる。現在は州の建設規制当局がSMC側に土地の利用許可を出した状態だという。
現地法人代表のアレクセイ・クシェフ氏によると、新拠点の建設はSMCのロシア市場における立場を強固なものにするという長期的な戦略を確認するものだとしている。
一方で、ウクライナ情勢を受けた対露制裁などの影響を懸念する投資家も少なくない。日経新聞によると、6月のSMCの株主総会では最高益を更新したのにも関わらず、高田芳樹社長の取締役選任議案で前回より約4ポイント低い89.7パーセントの賛成率となっていた。米議決権行使助言会社のグラスルイスはロシア事業の継続によるリスクを指摘しており、「SMCはロシア事業継続の決定の根拠を開示していない」として経営トップへの反対を推奨するなどしていたためだ。
SMCのロシア事業の事業規模は全体の1パーセント以下だが、今回の新拠点建設・事業拡大が株主の心理にマイナスに働く可能性もある。
これまでにウクライナ情勢を受けて欧米企業が早々と撤退を決めたなか、日本企業は対照的に残留して様子を見ている企業が多い印象だ。 2月の特殊軍事作戦開始以降、物流網の混乱などで撤退・営業停止を表明した日本企業が相次いだが、4月以降は脱ロシア化の流れは鈍化し、7月22日時点でロシアから撤退した日本企業がわずか5社だった。
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