延坪島は黄海側の北朝鮮と韓国の軍事境界線の近くに位置しており、韓国が実効支配している。朝鮮戦争直後に海上の軍事境界線「北方限界線」が引かれたが、北朝鮮はこれを認めておらず、その後も周辺ではたびたび両国が衝突している。近年では2010年に北朝鮮が延坪島に向けて突如砲撃し、兵士や民間人など4人が死亡する事件が起きていた。
聯合ニュースによると、今回裁判で争われたのは2002年の第2延坪海戦の補償問題。この海戦で韓国側は6人、北朝鮮側は13人が死亡した。韓国側の戦死兵の遺族らや参戦した兵士ら8人が、「北朝鮮の不法行為により肉体的、精神的損害を被った」などとして、2020年に北朝鮮を相手取り損害賠償を求め民事訴訟を起こしていた。
今月23日にソウル中央地裁は、原告1人あたり2000万ウォン(約204万円)の賠償支払いなどを北朝鮮と金正恩氏に命じた。だが、北朝鮮側は訴訟に応じておらず、実際に賠償金を受け取ることは難しいとみられている。
今回、ソウル中央地裁は韓国の国内法上では北朝鮮が「非法人社団(権利能力なき社団)」だとして、韓国に裁判権があるとの判断を示した。北朝鮮側には裁判所での掲示や官報公告などで裁判内容を伝達する「公示送達」によって提訴されたことを伝えたとしている。
日本でも2021年、北朝鮮の帰還事業で渡北し、その後脱北した在日朝鮮人らが北朝鮮を相手取り損害賠償を求めた裁判で、東京地裁が金正恩氏の「出頭」を求める公示送達を掲示し話題になっていた。
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