利益に対する脅威
「過去5年で、北極地域におけるNATOの軍事活動は、その量も頻度も2倍以上に増加しているという軍事専門家らの評価があります。しかも、この活発化する軍事活動には、北極圏に領土を持たないNATO加盟国やNATOの加盟国でない国々も引き入れられています。スローガンは素晴らしいのですが、この地域で軍事活動が増強され、緊張状態が引き起こされていることは明らかです。フィンランドやスウェーデンがNATOへの加盟申請をした後、NATOはバルト海をNATOの内海であると宣言し、それに続いてバレンツ海などのより北方の海もNATOのものだと要求するなどし、大いなる成功を収めつつあるのをわたしたちは目の当たりにしています。そして今度は、北極におけるロシアと中国の協力はNATOの価値観や利益に対する直接的な脅威であるというストルテンベルグ事務総長の声明が出されました。ロシアと中国の協力が、何らかの価値観に対抗するようなものとなる可能性があるでしょうか?露中の協力関係を評価することは、それがどこで行われようと、NATOの権限には含まれていません。この地域における自らの特別な利益や主張を表明することは、NATOから発せられる、ロシアの利益、そして中国の利益に対する脅威です」
NATOは地域問題を激化させている?
「NATOの政策は防衛を主眼としたものであり、誰にとっても脅威ではないとされています。しかし、NATOは自身の実際的な行動で、常に、それとはまったく反対の姿勢を示しています。現在、わたしたちが目にしているものは、NATOの地理的範囲を広げようとする野望の表れです。NATOが加盟国領内の安全保障問題と、加盟国同士の紛争の解決に取り組んでいるうちは、世界のどの国にも問題は生じません。しかし、NATOがその圏外で活動を開始するやいなや、問題が生じるのです。その最たる例と言えるのが、1999年のユーゴスラヴィア空爆です。またそれ以降にも、こうした事例は十分すぎるほどに存在します。アフガニスタンにおけるNATOの作戦の大失敗は、最終的に問題を激化させました。NATOが、問題を収拾するのではなく、新たな問題や脅威を最大限に生み出しているということは、もう一つ、NATOが少なくとも活動能力を有していないことを証明するものなのです」