NHKによると、中国の王毅外相はビデオメッセージの中で「これからの中日関係がどこに向かうかは我々の手にかかっている」と述べ、両国の関係発展や平和のために尽力するよう呼びかけた。一方で、緊張度が増す台湾情勢や歴史問題をめぐっては次のように指摘し、日本側をけん制した。
「歴史や台湾など、中日関係に関わる根本的な問題は少しもあいまいにしたり、揺らいだりしてはならない」
また、会場で講演した孔鉉佑駐日大使も「台湾問題をめぐっては慎重な言動を取り、台湾独立勢力に誤ったシグナルを送らないよう望む」と述べ、日本側にくぎを刺した。
シンポジウムには林芳正外相もメッセージを寄せ、「日中関係の進歩は両国民の努力の結果で、建設的かつ安定的な日中関係を構築することは使命、責務だ」と述べ、尖閣諸島問題や台湾情勢で悪化した日中関係の改善に意欲を示した。また、経団連の十倉雅和もあいさつし、「日中両国の首脳を含むハイレベル対話と意思疎通が重要」との認識を示した。
1972年の日中共同声明の発表をもって、日中国交正常化がなされた。これにより、日本は中華人民共和国を中国唯一の政権と認め、中華民国(台湾)と断交することになった。以来、「一つの中国」政策は日中関係の根幹となっており、台湾問題において中国側もこの立場を遵守するよう求めている。
昨年、日中の民間団体などの世論調査によれば、日本に対して「良くない」印象を持っていると答えた中国人の数は前年比13.2ポイント増の66.1%となった。加えて、中国に「良くない」印象を持つと答えた日本人は、同1.2ポイント増の90.9%で、2年連続の悪化となった。
一方で、日中には政治的に意見の相違がみられるものの、互いに重要な貿易パートナーであることには違いない。日本は今のところ、きわめて慎重な発言や行動を行っており、中国に対しても、欧米諸国に比べればかなり自制心を発揮していると指摘する専門家もいる。
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