ベーリング海に臨むアラスカ州ノーム市の海岸には、1960年代ごろまでは第二次世界大戦時に旧日本軍の侵攻に備えて設置された鉄条網が残っていた。その後、冷戦の時代になるとソ連の核ミサイルを探知するためのレーダーが置かれるなど、対ソ前哨基地としての戦略的重要性が高まった。
冷戦終結からソ連崩壊後、露米の緊張が緩和するとしばらくはアラスカに平穏が戻った。だが、今はどうだろうか。ウクライナ情勢などを背景に、露米関係は再び冷戦時代のような険悪な関係になった。一方で、地球温暖化の影響で従来アラスカを守ってくれていた氷が解けてなくなってきている。
米国の北極地域の専門家からは「アラスカの海岸線はますます対し無防備になった」「西側にとってウクライナ紛争は唐突なものだった。北極圏でその過ちを繰り返してはならない」と声が上がるなど、危機感が強まっている。
地政学的状況が変化するいま、北極地域は新冷戦の最前線になっている。米国は冷戦終結以来の平穏な夢から目覚め、アラスカ・ノーム市の港拡大を決定した。目的はベーリング海のコントロールを高め、米国を脅すことは簡単ではないとロシアに見せつけることだ。
米国は2021年、「北極のコントロールの復活」という新戦略概念を定めており、アラスカで極寒下での任務に対応した新部隊の配置を検討していることも報じられている。また、今年12月にはアラスカの氷海の上で8000人の兵士が参加する大規模な軍事演習も予定されている。
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