「ブルームバーグ」によると、「アルロサ」はロシアのサハ共和国に本拠のあるダイヤ採掘会社で、世界の原石供給の約3分の1を占めている。ウクライナにおける特殊軍事作戦の開始直後、「アルロサ」との取引を一時停止した企業が相次いだものの、現在はほぼ以前と同じ水準に戻っている。
だが、宝飾品業界大手の米「ティファニー」や「シグネット」は、米政府の制裁もあり依然としてロシア産のダイヤの調達を避けている。「アルロサ」から競合他社である南アフリカの「デビアス」への鞍替えに動いているが、「デビアス」が供給できる在庫はわずかだという。
こうしたなかで難しい対応を迫られているのが、採掘会社と宝飾品小売業者をつなぐ仲介業者だ。宝飾品加工業が盛んなインドではダイヤモンド取引が約100万人の雇用を支えている。ベルギーも世界のダイヤ原石の8割が経由する一大拠点であるアントワープ港を抱えていることから、ダイヤに対する制裁には反対してきた。こうした国々の業者は「ティファニー」など大口顧客のロシア産忌避と、「アルロサ」からの安価で安定した供給の間に立たされ悩まされている。
一方で、世界のダイヤ市場の体系は非常に複雑で、原石の採掘から加工、ペンダントや指輪を制作してから店頭に並べるまで何度も再取引を繰り返す。だから、ロシア産のダイヤがどこからどこへ販売されたか、一度サプライチェーンに入ってしまったら起源を辿ることはほぼ不可能となっている。そのため、ロシア産ダイヤ禁輸の制裁を課している米国を含む西側諸国にも、第三国を経由した「アルロサ」のダイヤが今も入り続けているという。
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