日本の中古車天国ウラジオストク、対露制裁後の変化 現地社長に聞く日本車需要の展望

© Sputnik / Asuka Tokuyama日本の中古車天国ウラジオストク 
日本の中古車天国ウラジオストク  - Sputnik 日本, 1920, 12.09.2022
独占記事
ロシア極東の町ウラジオストクでは、右ハンドルの日本車がたくさん走っている。むしろバスや大型トラック以外で左ハンドル車を見つけるのが難しいくらいだ。海の向こうでこれだけ日本の中古車が親しまれているのを見ると、なんだか嬉しくなる。この半年、日露関係が悪化する中で、中古車市場はどのような変化を遂げたのか?ウラジオストクで日本の中古車販売を手がける会社のひとつ、「PRIORITY AUTO」の創業者、コンスタンチン・タラソフ社長に話を聞いた。
日本の中古車買う方法は大きく分けて二つある。一つは、実物を見て買う、古典的な方法だ。ウラジオストクには「グリーン・コーナー」という、非常に有名な中古車市場がある。あらゆる車が広大な敷地にずらりと並んでおり、実際の車を見ながら品定めできる。フロントガラスには製造年、車種や特徴、売主の電話番号が書いてある。気に入った車があれば売主に電話して商談する。ロシアの他の地域から来る人も多い。ロシア南部の町ボルゴグラードから来た夫婦は「日本車の耐久性は抜群。わざわざここまで来て、選ぶ価値があります」と話した。
© Sputnik / Asuka Tokuyamaグリーン・コーナー
グリーン・コーナー - Sputnik 日本, 1920, 12.09.2022
グリーン・コーナー
タラソフ氏の案内で一緒にグリーン・コーナーを回った。「売れ筋はミニバン、ファミリータイプの車ですね。こういう車はすごく日本的で使い勝手が良く、とても人気があります」と言う。売り手も、売れそうな車を厳選して買い付けるので、同じ車種が何台も並んでいたりする。
タラソフ氏によると、今現在のグリーン・コーナーは、比較的空いているという。車が安定的に売れていくのに対し、船便の関係で入荷は安定的ではないからだ。中にはBMWやベンツのような、日本市場向けドイツブランドの車もある。色はモノトーンが多い。こういう場所で車を買う人は保守的で、10年は乗るつもりなので、黒や白、冒険したとしても青を選ぶ。
敷地内には部品売り場や、売約済みの車をロシア全土に送るための積み込み作業場もある。人気のある部品ともなると、解体前の車がまだウラジオストクに着いていない段階から売約済みになることもある。日本のお菓子や健康食品を買える小さなお店も数軒あり、一日中でも散策できそうだ。
© Sputnik / Asuka Tokuyamaフロントガラスには車の情報と連絡先が書いてある
フロントガラスには車の情報と連絡先が書いてある - Sputnik 日本
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フロントガラスには車の情報と連絡先が書いてある
© Asuka Tokuyama日本の港で書かれたと思われる日本語
日本の港で書かれたと思われる日本語 - Sputnik 日本
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日本の港で書かれたと思われる日本語
© Sputnik / Asuka Tokuyamaトラックのコーナー
トラックのコーナー - Sputnik 日本
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トラックのコーナー
© Sputnik / Asuka Tokuyama日本製品が買えるお店、充実した品揃え
日本製品が買えるお店、充実した品揃え - Sputnik 日本
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日本製品が買えるお店、充実した品揃え
© Sputnik / Asuka Tokuyama右ハンドルのBMW
右ハンドルのBMW - Sputnik 日本
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右ハンドルのBMW
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フロントガラスには車の情報と連絡先が書いてある
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日本の港で書かれたと思われる日本語
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トラックのコーナー
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日本製品が買えるお店、充実した品揃え
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右ハンドルのBMW
日本の中古車を買うもう一つの方法は、あらかじめサイトを通して欲しい車を選び、日本の中古車オークションで競り落とした後に、ウラジオストクまで運んでくることだ。タラソフ氏の会社「PRIORITY AUTO」では、予算や条件を提示すると車選びを手伝ってもらえる。無事、お目当ての車が落札できれば、あとは待つだけ。9月上旬現在、落札してから納車までわずか1か月から1か月半と、思ったよりスムーズだ。待つ間、きちんと届くかどうか不安に思う人が多いので、落札から各種書類手続き、車の輸送まで迅速に手がけてくれる日本のパートナー複数社と連携している。
以前から日本の中古車販売に携わっていたタラソフ氏は、2018年に自分の会社「PRIORITY AUTO」を立ち上げた。日本車の需要はその後、安定的に伸びてきた。ディーラーで新車を買うよりもずっと安価で、品質の良さに定評があるためだ。今、この市場に大きな変化が起きている。

「私の会社が日本から買い付ける車は、直近の4〜5か月間で、3倍も増えています。これまで平均して1か月60台くらいだったところ、今では150台から180台くらいです。同業者の中にはこれまで月に100台だったのが、300台運んでいるところもあります。ウラジオストクには私たちも含めこういう会社が少なくとも100社はありますし、ロシア全土の同業者や、個人で副業として中古車売買をする人も多いことを考えると、この購買増の流れは非常に大きなものと言えるでしょう」

今年の3月頃には、日本の中古車ビジネスはもうおしまいだという噂があった。しかしそれは長くは続かなかった。

「3月はその通りで、1台も購入申し込みがありませんでした。それは外貨レートの急激な変動、ルーブルの一時的な暴落のせいです。運送には問題はなかったので、それよりも前に車を買った人は無事に受け取ることができていました。ただ税関には、車が運ばれてきた日のレートで手数料を払わないとならず、手数料はユーロをベースにしているので、当初予定よりもかなり多く払うことになってしまったケースがありました」

© 写真 : Asuka Tokuyama「PRIORITY AUTO」社のコンスタンチン・タラソフ社長
「PRIORITY AUTO」社のコンスタンチン・タラソフ社長 Asuka Tokuyama - Sputnik 日本, 1920, 12.09.2022
「PRIORITY AUTO」社のコンスタンチン・タラソフ社長
4月・5月には、円安が加速し始めたことと、世界的な物流問題から、日本の中古車オークションで高値をつける海外の業者が少なかったため、ロシア人にとってはかなりお得な買い物ができた。また、制裁の影響でロシアからのドル送金を受け付けない日本の銀行が多く、ロシアで日本円を購入し日本円を送金する手法を取ることで、円安のメリットを最大限に生かせている。今現在の市場の状況は、それなりに安定している。
ロシアにおいてヨーロッパや日本ブランドの新車生産がストップしていることから、中国の新車への需要が高まるのでは?と言われているが、タラソフ氏は懐疑的だ。

「確かにロシア中部でも、ここウラジオストクでも、町を走っている中国車は見ます。ただロシア人が中国車の品質を信じているかというと疑問です。外見は綺麗でも、短期間で壊れてしまうかもしれない。どのモデルも比較的新しく、ロシアで中国車の耐久性を調べた人はいないからです。中国車の正体を理解するためには時間がかかるでしょう。せめて1年、2年後なら、何らかの評価をすることができると思います。日本車の場合、私たちはその構造の全てを知っていると言っても過言ではありません。何か足りないところがあればどう対処すべきか分かりますし、実際に対処します。ロシアの中間層というのは、生活に必要な以外の全てのお金を集めて車を購入します。それだけに、未知すぎる中国の新車を買ってリスクを取るより、中古でも信頼がおけて定評のある日本車を選ぶのが自然です」

海洋政策研究所・阪口秀所長 - Sputnik 日本, 1920, 08.09.2022
笹川平和財団・海洋政策研究所長、東方経済フォーラムで北極の諸問題を討議 ロシア訪問で対話を継続
いっぽう韓国市場向けの日本車(左ハンドルのレクサス等)やヨーロッパブランドの車については、韓国における仕入れ値が高いため、あまり商売にならないという。公式ディーラーがロシアでの販売を停止したことから、韓国側が安価でロシアに売るのを渋っているのである。

「我が社では韓国車も扱っていますが、お客さんがリクエストしてこない限り自分からは勧めません。私は日本イコール高品質、だと考える保守主義者なんです(笑)」

タラソフ氏の会社は、基本的にお客さんが注文したものを落札して取り寄せる仕組みのため、グリーン・コーナーに車を置いてはいない。つまりは、現物を見ないで購入する心理的ハードルを下げる必要がある。

「ネットでの情報発信を増やすことで、かえって、オンラインでの大きな買い物に抵抗のある上の世代の層の信頼を獲得できているように思います。例えばYouTubeでは、社長自ら出演して、実際の車の状態などを包み隠さず話すことで、信頼を少しずつ得ています。逆に、ネットでの購入に慣れている若い人を驚かすのは難しいです。彼らにとってはプレゼン的に目を引くこと、見た目が大事ですが、私は、本当に大事なのは専門家が揃っていることだと考えます。怒涛の90年代を体験した人は、美しい「絵」の裏には何か罠があると知っていますから、コンテンツを作るときにはその中間くらいをターゲットにできるよう意識しています」

日本の中古車が運ばれてくる際は基本的に空っぽだが、たまに日本の痕跡が残っていることがある。ある人は、日本のポップソングがハードディスクに残っていたので、日本の音楽を聴きながらロシアの町をドライブした。業務用トラックの中には、製品カタログが残っていることもある。タラソフ氏は言う。

「読めなくても、そういうものを見つけるとお客さんも喜ぶんです。この車、本当にはるばる日本から来てくれたんだなって。私は2度、日本へ行ったことがあります。その時助けてくれた日本人に感謝しています。私たちのような極東で働くエンジニアや自動車産業に関わる人たちは、日本で作られた車の質に大変満足しています。そして日本人が車を大切に扱うため、受け取る車の状態にもそれがあらわれています。7割くらいの車は、たとえ走行距離があっても、昨日工場から出てきたばかりなのかな?と思うほどです。日本とは、互いに自由に行き来したり、文化を知って、いつも友人でいたい。この仕事をやっていて日本と自分の人生を結びつけることができ、本当に良かったと思っています」

「今の安定した状況が続けば、日本車の需要は今後も伸びる」と予想するタラソフ氏。筆者が訪問した日も、会社には、待望の車を引き取りにブリヤート共和国から夫婦が訪れていた。あなたが今日売った車は、1か月後にロシアの誰かを喜ばせているかもしれない。
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