ベトナムの国際関係問題の専門家グェン・ホアン氏は、「スプートニク」からのインタビューに応えた中で、「今回のロシアの決定は予想可能なものでした。なぜなら特別作戦の中では、敵よりもロシアの側により多くの可能性があったからです。選択されたそれぞれの決定は、軍事の意味においても、また政治の意味においても根本的な変化をもたらし、それと同時に軍事行動をある段階から別の段階へと移行させることを意味するものです」と述べている。
4つの地域のロシア編入についての演説の中で、ウラジーミル・プーチン大統領はこうした決定を下した根拠について、2014年にウクライナでネオファシズムによるクーデターが起きたこと、ウクライナ政府がこの4地域の住民の権利を保護しないこと、ウクライナ政権による直接的なテロが行われていること、これらの地域の住民がそのような願望を持っていること、住民には、国連憲章にも記されている自らの運命に対する決定権があること、これらの地域がロシアと数世紀にわたるつながりを持っていることなどを挙げ、次のように述べた。
「ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州の数百万人の住民の選択の背景には、わたしたちの共通の運命と1000年の歴史がある。この精神的なつながりを、人々は自分の子どもたち、孫たちに伝えてきた。そしてあらゆる試練にもかかわらず、歳月を越えて、ロシアへの愛を受け継いできた。この気持ちを踏みにじることは誰にもできない。だからこそ、高齢の人々も、またソ連邦崩壊の悲劇の後に生まれた若者も、わたしたちの統一、わたしたちの共通の未来に票を投じたのである」。
一方、これに関して、ベトナムの歴史研究家ホアン・ジャン氏は、「スプートニク」からの取材に対し、次のように述べている。
「ロシア大統領が述べた言葉は、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州の住民たちの選択が正しく、予測可能なものであったことを証明しています。この4つの地域の人々には、ロシアと共通の歴史と運命、そして未来があるのです。彼らの選択は、歴史的なものであり、今日の出来事は、本当に偉大な歴史的な出来事です」。
この4地域のロシア連邦への編入の意味を評価するにあたり、グェン・ホアン氏は、「真珠が合浦に還った」というベトナムの表現を用いている。これは、ある理由で失われた価値のある財産が最後には何らかの形で元の所有者に戻ることを意味したものである。
「この表現は、ロシア連邦が、ソ連邦崩壊という世界で最大の世紀の『政治の大変動』をはじめとする多くの理由によって失った自らの歴史的な土地を取り戻し、これからも取り戻していくという事実に完全に合致したものです。これらの土地は、『新植民地主義』の法に基づいて操作され、西側の競争勢力によってコントロールされてきたものなのです」。
一方、9月30日の夜、赤の広場で開かれた集会で演説を行ったプーチン大統領は、他でもないロシアこそが今日のウクライナを形成したのだと強調した。
「今日という日は、わたしたちにとって、特別で厳粛な、そして誇張なしに歴史的な日―真実と公正の日である。ソ連がいかにして形成されたのかを指摘せずにはいられない。ロシアがウクライナに自らの歴史的な領土の大部分を住民とともに与えたことにより、今のウクライナを作り上げたのである。誰も人々に、どこでどのように暮らしたいのか、自分の子どもたちにどの国でどのような未来を与えたいのかと訊ねなかった。そしてソ連邦が崩壊したときも同じことが起こった。そのとき政権についていた者たちが勝手に決めたのである。誰も、数百万の人々に何も訊ねることはなかったのだ」。
歴史研究家のホアン・ジャン氏は次のように述べている。
「これは米国や西側のメディアが、すべてのウクライナ人を失うまでロシアと戦うためにウクライナの傀儡政権を利用しようと、故意に無視している歴史的事実です。西側寄りのウクライナ政府は、わずか30年で信じられないほどにロシアを憎むような世代を育てるために、現実とまったく合致しない独自のウクライナの歴史を作ったのです」。
主に西側の地域から、米国と西側に支えられたネオファシズムがウクライナにもたらされたことにより、ウクライナに住むロシア人の生命と運命は深刻な危険に晒されるようになった。
歴史研究家のホアン・ジャン氏はさらに次のように述べている。
「ウクライナのロシア人には、自分の国を選ぶ権利があります。そしてその願いは完全に正当化されました。この選択は、新たなロシアにおいて然るべき法的地位を占めるため、ロシアの屋根の下に戻りたいという願い以外の何ものでもありません」。
ホアン・ジャン氏によれば、プーチン大統領の演説はさらに2つの聞き手に向けられていると指摘する。それは西側と米国、そしてこれらの国に追従している国々である。
「大統領はその演説の中で、西側と米国の本当の顔を露わにしました。大統領は、ベトナムと朝鮮半島における犯罪について指摘し、米国は原爆を使用した唯一の国であると述べました。またロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、テレビ局『ズヴェズダー』のインタビューで、式典での大統領の演説は、外国の政治家たちに多くのことを説明するものとなるはずだと述べています。外国の政治家たちはこの演説を最初から最後までよく読む必要があるでしょう」。
ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州がロシア連邦の構成体に戻った後、これらの地域に対して撃ち込まれる砲弾、爆弾、ミサイルはすべて侵略行為と見なされ、ロシアは対抗措置を取る権利を有する。
これについては、ロシアの前大統領で、現在はロシア安全保障会議副議長であるドミトリー・メドヴェージェフ氏も米国、NATO、ウクライナ政府に対し、断固たる警告を行った。
ホアン・ジャン氏は、赤の広場での集会の直後に、「スプートニク」からの取材に応じた際、次のように述べている。
「ロシア大統領は、式典での演説の中でも、また赤の広場で行われた集会でも、ロシアは自国の領土を守り、新たにロシアに編入した土地の住民と指導者の安全レベルを高めるためにありとあらゆることを行うと強調しました。このようにして、ロシアの特別軍事作戦は新たな色調を帯び、新たな形となっていきます。なぜなら、ロシア国家の主権を守ることがその目的となるからです」。
こうして、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州はロシア連邦の新たな構成体となり、ウクライナにおけるロシアの特別作戦は少しずつ、解放作戦となった。
ロシアとロシア軍にとっての直近の主要課題は、領土だけでなく、人々を解放するということである。
歴史と国際関係の専門家であるグエン・ホン・ロン氏は「スプートニク」の取材に対し、次のように述べている。
「ヘルソン州、ザポロジエ州、ドネツク州の領土の一部は今なおウクライナのコントロール下に置かれているため、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官が述べているように、戦場におけるロシア軍の今後の課題は、これらすべての州の解放、ロシアの新たな国境の整備と防衛になります」。
さらにグェン・ホン・ロン氏は、これは短期的な課題であり、長期的には、このような戦略および戦法で、ロシアは、少なくともドニエプル左岸のロシア人が住む地域のロシア返還を継続していくだろうと指摘している。
「ウクライナの完全な解放を目指すロシアの長期的な計画は、今後の状況の発展に左右されるでしょう。忘れてはいけないのは、ピウスツキを長とするポーランドの占領軍と白衛軍から西ウクライナを解放するという課題を遂行するのに、赤軍は1919年から1921年の3年もの戦いを強いられたということです。またウクライナをナチスドイツの占領から解放するために、ソ連軍はヴォルニからザカルパチエまでの国境を回復するまで、クールスクでの防衛攻撃作戦から4つの戦線で18ヶ月以上にわたり戦闘行為を行わなければなりませんでした。この課題を遂行に向け、ロシア軍はこれまでと同じく、自国の住民や兵士の損失を抑えるため、近代的な精密兵器の使用を取り入れた古典的な戦い方をするでしょう」。
一方、「スプートニク」が取材したベトナムの専門家らは、この紛争はウクライナ政府に支援を行っている国々に深刻な影響を及ぼすだろうとの評価を与えている。その筆頭に挙げられる分野が、エネルギー資源、食糧、そして現代の産業に必要不可欠な鉱物資源に関するものである。
英国、イタリア、スウェーデンなどの国々での政治舞台における変化、また英国、チェコにおける抗議運動、急激に進むインフレを見ただけでも、ウクライナ紛争がEU諸国やNATO諸国に与えている「ドミノ効果」を見てとることができるのである。